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紺碧の将

“モフモフ”はやっぱりもふもふだ!!

2022.10.14

 久しぶりの個展であるが、開催日がひと月を切り私にもやる気が湧いてきた。

 この時期一番大切なのは、やる気と営業活動である。創作は概ね完了という態勢がベストではあるが、まだまだ作りたいものはある。しかし作品作りはエンドレスといえるから、締め切りという約束事があるということは、とても大切なのである。

 そして同時に進めていたビーズ本の出版という作業も、編集者との約束通りほぼ3か月の期間をクリアして、個展開催に間に合いそうである。

 「ところでビーズの作品は出来ているの?」編集者のTさんは一息ついた途端心配になったらしい。そうそう制作に頭を切り替えないと……。その前にDMの発送や、各地のギャラリーやビーズの店、友人にも届けないといけない。これは私をアピールするいちばん大切な仕事、皆に支えられているのだから。

 

 自分で言うのも何だが、近頃の私は頭と体の回転がいいと言うか切れがある。やる気が起きる妙薬を呑んでいるわけでは決してないが、薬以上に大切なものを私は頂いている。

 ほぼ2年前のことだが、突然私の頭髪がみるみる落ちて、あっという間につるつるの坊主頭になってしまった。私にとっては不可解千万、皮膚科のお医者さんからは原因不明の奇病の一種であるとの診断を受けた。夫曰く、こんなに発達した世の中でも、特に人間の体はまだまだ分からないことがいっぱいあるんだよと。

 原因不明とは不思議であったが、元来楽天家の性分なのかちっとも落ち込みはしなかった。この際、帽子のファッションと研究を楽しもうと思った。もともと帽子は大好きである。おかげで帽子コレクターになりそうだ。今のところ私のベストはメイドインフランス製、何気なくて、小粋でわくわく感がある。ドイツ製は被って安心感がある。イメージとしてはマリーネデートリッヒといったところか。余談はそのくらいにして……。

 1年半過ぎた頃から、頭の中心、つむじの辺りがざらざらしてきてそのまましばしの月日が流れた。ある時また目覚めたようにざらざらが周辺に広がっていくのである。その内中心から前後に白い毛がふわふわと伸びてきて、ひと月もしたらモヒカン族みたいになり、周囲も少しづつ伸びてきて今はサバンナ地帯となっている。

 私はそっとわが頭をさすってみる。モフモフしていて気持ちがいい。私の心がもっともっとと望んでいる。モフモフしたい人が猫を抱いてうっとりしている画面をテレビで見かけることがある。猫はされるがまま、すっかりくつろいでいる。いま猫になった私は、私の手によって誘われ、モフモフしたい人とされたい猫を行き交いしていてダブルの快感を味わっている。

 治療はしていたものの、生えてくることにはそんなに期待はしていなかったのに、この成長ぶりは奇跡に近い。気が付けばいつも考え事をしながら頭をさすっている。おまじないのようである。誰にも経験できない私だけの悦楽。まだ私の体の中に成長する部分が残されていると思うと活力が生まれてくる。

 

 ギャラリーからメールでフォーマットが届き、作品の名称、価格など打ち込んで送って欲しいとの連絡が届いた。200点ほどもありそうで、私はこの作業が一番苦手である。息子にいい手段はないかと尋ねたら、作業を早めるスキルをいろいろと教えてくれるのだが、その内私の頭の中は混乱状態、慣れないことは矢張り頭に入らないものである。

 それよりも我がもろい頭を満杯にして、せっかくのこの愛しいもふもふを失うことだけは勘弁してほしい。

 

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