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紺碧の将

Bloominng Flowers

2023.09.22

 某新聞は読者向けにサービスの一環として、毎月額絵となる絵を2枚組で提供してくれる。

 前回は『オランダ黄金時代の至宝』と銘打って、スペインからの独立を果たしたオランダのその後、100年の隆盛ぶりを絵画を通して知ることが出来るというとても深い内容であった。

 そして7月からスタートした新シリーズはそれ以上に私の興味をそそるものであった。そのメッセージが面白い。

 「花の絵は美しいだけでなく画家の力量を試すものでもあります」とあった。「ふふーむ……」私はのっけから衝撃を受けた。そして「並外れた才能と情熱なしに、草花がもつ天然の美と生命力を超えることはできません」と。「なるほど、なるほど」と私は深く頷く。「その難題に挑んだ6人の巨匠たちによる季節の花々を……」云々とある。

 6人の巨匠とは、モネ、ルノワール、ゴッホ、ラトゥール、ルドン、マネ、の登場である。これは何としても必見、私は早速専用ファイル(有料)を取り寄せて、来年6月には24枚のシリーズが揃うであろう一冊を想像した。年間ラインアップを見ても、モネの「水連」ゴッホの「ひまわり」など周知の名画が揃うことになっている。

 中でも私が一番心躍るのはゴッホの「アイリス」。ゴッホはひまわりも描き続けたがアイリスにも相当魂を入れ込んだように思える。様々な構図に画家の飽きることのないアイリスへの賛歌と、自然界の生命力をつかみ取ろうという気迫がキャンパスに溢れかえっている。

 ここにきて私は、長年抱いていた漠然とした悩みに、一つの解答が与えられた気がして目の前の霧が晴れた思いがする。

 ビーズフラワーと向かい合って半世紀にもなろうというのに、今だにこの世界に埋没している自分の存在が分からなくて、思いつめると「私、何のために生きているの?」にぶつかっていた。いくら好きなこととはいえ、明けても暮れても、時には子育てや家事の時間までも浸食していたから、若い頃はその後ろめたさにも苛まれていた。

 しかし私のこの訳の分からない執念みたいなものは「生きた花の美しさを乗り越えたい」の一念にあったのではないかと気づき始めた。

 かの美の巨匠たちはこの難題に勇気と喜びを持って取り組み、後世の人々をこんなにも魅了しつづけている。どんなにあがいても私には私の力量しかないのだけれど、その思いに憑かれる人間の姿には上下はないのだという納得が生まれた。ビーズに取りつかれた変な私を蔑まないでおこう、情熱のともしびを揺らしながら「私のアイリス」を構築してゆくのだ。

 力強い紫の群生の中に一本の白いアイリス、その向こう側にはオレンジ色の可愛い小花が沢山ちりばめられている。多分キンセンカかマリーゴールドであろう。親戚か兄弟のように似ているからどちらでもいいと思う。それよりも紫とオレンジのコントラストが抜群なのである。フィンセント・ファン・ゴッホが表現する色づかいも素敵!!

 偶然にも私は今マリーゴールドにはまってしまい、20本も作った。オレンジや黄色、そしてプチプチと何色も混ざり合ったビーズの粒たちは、この陽気な花のイメージづくりに本領を発揮している。私が夢中である限り、いつかはどなたかの胸にも幸せのともしびが灯ることを信じている。

 

マリーゴールド

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