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紺碧の将

「個展」という名の避けがたき誘惑② ─友、遠方より来る─

2022.11.30

 私の故郷は富山県高岡市である。そこで18歳まで成長し、育まれてきたのだから、その後どこに移り住もうが、どのような体験を積もうとも、原点である「高岡」というDNAは私の中にしっかりと根付いているのではないかと常々考えている。両親から受け継いだDNAというものがあって、良きにつけ悪しきにつけ避けられない定めを感じるのだが、育った環境というものはそこに何らかの味付けをしてくれていたのではないかと思っている。

 富山湾や近海で捕れた新鮮な魚介類は日常のご馳走、何か月も続く雪が積もった真っ白な世界、近くの古城公園は美術の授業では大切なキャンバス、万葉の歌人家持が国守であった頃、詠まれた数々の歌に出てくる二上山は日曜日のハイキングコース……、まだまだ浮かぶ懐かしいシーンの中には必ず沢山の友がいた。皆素朴で逞しい、そしてとても暖かい。

 小学校時代の仲間は中学、高校と進む間に少しづつ別れていき、音信も途絶えるという年月が過ぎていった。それでも昔の幼馴染はしぶとく愛情深い。これがラストチャンスとばかり宮比古君が立ち上がってくれた。その名も「北関東平米会」(きたかんとうひらまいかい)。東京を中心に宇都宮、静岡に住んでいる私たち平米小学校時代の同窓生が年に一度集まろう、という会なのである。それが13年続いた。会場は変わらず東京・四谷のある一角。今はコロナ体制が厳しく難しい現状だが、私たちの輝かしい歴史が続いている。

 20名近くの仲間の中には、報道カメラマンとして活躍した宗晴君が毎年記念撮影とスナップ写真入りのCDを纏めてくれる。彼が欠席の年は息のあった相棒として由貴子さんがバトンタッチ、永久幹事を自ら名乗る宮比古君の手慣れたお誘いは、我が故郷とその近辺にまで及び、後半には石川県からはせ参じてくれる友もいる。勿論高岡には愛郷心の塊、晴夫君が居て「高岡」を世界に発信している。年に一度顔を見せてくれるふるさと報告が楽しみな私たちである。まだまだ続きそうな私の故郷と友達自慢は次の機会に一段と過激に盛り上げたい!

 

 11月初旬の個展3日目は、朝一番、開幕から盛り上がった。平米会のメンバー4人が押し寄せてきた。皆元気はつらつ、背筋はピンとしていて活舌爽やか、80代突入の仲間とはとても思えない。ギャラリーのスタッフは慌てふためいている。小さな会場は一瞬のうちに盛り上がり「ミニ同窓会」のオープンである。1か月前から「きっと行くからね」と約束してくれた石川県河北郡から早朝に出発したであろう美智ちゃんが大きな赤い帽子にフェミニンな出で立ちでお出ましだ。お土産は私の好物、富山のかまぼことか。さすがである、呑んべいの私を熟知しているなぁ。帰宅したら夫とカンパイだ!

 十美子ちゃんとも同級生なのに私の保護者のような存在、関係ない人にまで「康子ちゃんをよろしくね」と言っている。「私はあなたの子供か?」と思う時もあるのだが、展示会の度に「腕を上げたね」と言ってくれるし、「昔から文章を書く素質があったから、ガンバレ!」と励ましてくれる。やっぱり愛情込め込めの私のお姉さんかもしれない。

 いつもカメラを携えている由貴子ちゃんはとってもカメラ上手。すごく目線が柔らかく、写真全体の姿がいいのだ。それは撮る対象を心得ているからだと思う。「私のビーズワークの写真専属になってください」とラブコールを送っているのだが、今のところ「ご冗談を」と軽くいなされている。

 勝偉君は5人の中の男子一人。同じ時間に集まれるようにとみんなに声をかけてくれたらしい。5人が集まった写真は何物にも代えがたい私たちの宝物となるであろう。80代を元気に生き抜くぞ、という迫力がそれぞれの笑顔の中ににじんでいる。

 こんな素敵なチャンスを作ったのは誰? ここは丸く収めて神様の御業ということにしましょうか。

 

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