どんなに時代が変わろうとも、本が人類の知的財産であることに変わりはありません。
少年の時分より、本を師と仰ぐ髙久 多樂がさまざまなジャンルから独断と偏見で選んだ300冊の本。
本選びの際の参考書として、活用してください。【テキスト/髙久 多樂】
Topics
file.050『透光の樹』髙樹のぶ子 文春文庫
この作品の主人公は今井郷と山崎千桐。生身の人間と人間がここまで深く交感できるものなのか、と思わせるほど濃密に関わった。二人が20数年ぶりに再会したとき、郷は47歳、千桐は42歳にな…
file.049『ラ・ロシュフコー箴言集』二宮フサ訳 岩波書店
情と理。人間の心は、両者が均衡してこそバランスがとれると思っている。どちらが勝ちすぎても均衡を失う。強いていえば、情が6、理が4くらいの割合だろうか。人間にとって情は欠かすことので…
file.048『楢山節考』深沢七郎 新潮文庫
平均寿命がどんどん伸び、ついに「人生100年時代」と言われるようになった。これはこれで、ある人たちにとっては喜ばしいことにちがいない。しかし、すべての人にとって、そうだと言えるだろ…
file.047『長距離走者の孤独』アラン・シリトー 丸谷才一・河野一郎訳 集英社文庫
シリトーを初めて読んだときの印象は忘れられない。「スカッとした」ひとことで言えばそういう感慨だった。あれは高校1年のとき。集英社が刊行を始めた現代の世界文学全集の初回配本がシリトー…
file.046『宇宙のカケラ』佐治晴夫 毎日新聞出版
うすうすそうではないかと思っていたことが、はっきり書かれている。本書の冒頭に、こうある。――私たちの体を構成しているすべての物質は、星が光り輝く過程でつくられました。その星が超新…
file.045『裸のサル』デズモンド・モリス 日高敏隆訳 河出書房新社
面白い装丁だ。赤い背景に、黒いサルが正面を向いている。透明のカバーを取るとサルの体毛を表していた黒い部分がなくなり、縞のスーツを着た人間が現れる。よく見ると、カルロス・ゴーンが痩せ…
file.044『山椒魚』井伏鱒二 新潮文庫
山椒魚は悲しんだ。そう始まるこの短篇を多くの日本人が学生時代に読んだ(あるいは読まされた)。筆者もその一人だが、しかし内容は漠然としか記憶に残っていない。なんといっても短かすぎる。…
file.043『異邦人』アルベール・カミュ 窪田啓作訳 新潮文庫
初めて読んだのは高校生のときだった。なんとも名状しがたい読後感だった。かつて味わったことのない不気味な違和感があるのに、妙な共感もある。なんだこれ?このわからなさは?40年ほど時を…
file.042『坂の上の雲(全8巻)』司馬遼太郎 文春文庫
「坂の上の雲」とはなんとも言い得て妙のタイトルだ。坂の上に浮かぶ雲を目指して一丸となって進んで行った時代の青春群像を描いた巨編に、これ以上ふさわしいタイトルはない。本書は戦後の高度…
file.041『植物の神秘生活』ピーター・トムプキンズ+クリストファー・バード 新井昭庸訳 工作舎
「植物人間」という忌まわしい言葉がある。そうなってしまった人はもちろんのこと、植物をも愚弄する言葉だ。かねがね、植物は尊敬されるべきだと思っている。地球と直接つながっている生き物は…