どんなに時代が変わろうとも、本が人類の知的財産であることに変わりはありません。
少年の時分より、本を師と仰ぐ髙久 多樂がさまざまなジャンルから独断と偏見で選んだ300冊の本。
本選びの際の参考書として、活用してください。【テキスト/髙久 多樂】
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file.078『葉っぱのフレディ』レオ・バスカーリア みらいなな訳 童話屋
アメリカの哲学者レオ・バスカーリアが生涯にただ一冊書き残した絵本である。葉っぱを擬人化し、生まれてから死ぬまでの物語を温もりのある、わかりやすいタッチで表現している。作者の死生観は…
file.077『木の教え』塩野米松 草思社
ヨーロッパは石の文化、日本は木の文化だと言われる。風土と精神性に最も適していたのが、その素材だったのだ。なるほど、日本人は木をうまく使ってきたし、愛着を寄せてきた。新国立競技場の設…
file.076『カラマーゾフの兄弟』ヒョードル・ドストエフスキー 原卓也訳 新潮文庫
19世紀中期、農奴解放後のロシアの社会混乱を背景に、底なし沼のような人間の多面性を描き、世界文学史の頂点のひとつとして揺るぎない評価を確立している。この頂に初めて登ったのは22歳の…
file.075『私は虫である』熊田千佳慕 求龍堂
98歳の生涯を閉じるまで昆虫や植物を描き続けた〝プチ・ファーブル〟こと熊田千佳慕の言葉を集めた本。世に名言集はあまたあれど、これほど独自の生き方に裏打ちされた言葉を集めた本はめずら…
file.074『西行花伝』辻邦生 新潮社
鳥羽院の北面の武士だった佐藤義清(のりきよ)が歌の道に生きると決意して出家し、西行と名を改め、2300首もの歌を作りながら濃密な73年の生涯を閉じるまでを、弟子の藤原秋実が聞き語り…
file.073『人間臨終図鑑』山田風太郎 角川文庫
奇書と言っていいだろう。文庫で全3巻。古今東西、名の知られた人物927人がどのような最期を迎えたかが描かれている。死亡した年齢順に、下は15歳から上は120歳まで、まさに百人百様の…
file.072『じんかん』今村翔吾 講談社
ずっと気になっていた人物がいた。それが松永久秀だった。彼の行動原理が理解できなかったからだ。仕えた主人を殺し、織田信長に2度も謀反を起こし、将軍・足利義輝の暗殺にも関わり、東大寺大…
file.071『祖国とは国語』藤原正彦 新潮文庫
この本は、2000年から3年ほどの間に書かれたエッセイをまとめたもの。保守系の新聞や雑誌に掲載した11篇「国語教育絶対論」、朝日新聞などに掲載した20篇「いじわるにも程がある」、そ…
file.070『こだまでしょうか、いいえ、誰でも。』金子みすゞ ミヤオビパブリッシング
金子みすゞは不思議な人だ。いや、みすゞからすれば、周りの人たちがおかしいと思ったにちがいない。こういう作品がある。「不思議」私は不思議でたまらない。黒い雲からふる雨が、銀にひかって…
file.069『ドーダの近代史』鹿島茂 朝日新聞社
ドーダ学とは、「ドーダ、おれ(わたし)はすごいだろう、ドーダ、マイッタか!」という自己愛に源を発する表現行為であると、東海林さだおが『もっとコロッケな日本語を』で書いたらしいが、そ…