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紺碧の将

インスパイアの応酬

2024.03.18

 先日、拙著の刊行をきっかけに、知人と7年ぶりに会食をした。前回会ったのは多樂サロンでのこと。才気煥発なのにキレキレの印象を与えず、むしろ鷹揚としたところがあって、やがて大人となるであろうことを予感させる好男子だった(当時、33歳)。

 会って話をするうち、7年という年月の重みを感じた。7年で人間はこんなに成長できるのか! と。クラウゼヴィッツ、オイゲン・ヘリゲル、孫子……と次々に話題を変えてもまったく対話に淀みがない。3時間が一瞬のうちに過ぎた。筋トレの成果で首は太く、体も屈強。昼休みに7キロ走っているという。私と飲んだ翌日、山に登っている。

 彼曰く、「体も頭も、どこまで伸ばせるかということに興味があるんです」。

 文武両道とは彼のような人物をいうのだろう。とても眩しく感じられた。代々家に受け継がれてきた日本刀を使っての剣術のほか、さまざまな武術、古今の学問や英語習得にも貪欲。

 そもそも対話(ダイアローグ)の本質を知っている。情報インテリジェンスに関わる仕事をしていて多くの部下がいる以上、ダイアローグはどうしても欠かせない能力である。

 家庭での教育も素晴らしいのひとこと。自分が猟銃で獲ってきた獲物を4人の息子といっしょにさばいている動画を見せてもらった。さばいた後、みんなで料理をするという。人間は、他の生き物の命をいただいて生きているという荘厳な事実を教えるうえで、それ以上の方法はないだろう。

「僕は超アナログ人間です」という割に、部下たちとの勉強会の資料をパワポで何百ページもつくったり……。

 嬉しいのは、巨大な組織にいながら、年功序列を超えて大抜擢されているということ。もう有能な人材を旧弊の人事システムで埋もれたままにしておく余裕はない。日本の組織も変わってきたなあという印象を強くした。

 

 彼と飲んだ翌日、私は東京体育館のトレーニング・ジムを下見した。今でも毎日自宅でのトレーニングを欠かさないが、もう少しきちんと鍛えようと思ったのだ。つまり、彼の影響を受けたというわけ。

 なんといっても体が資本。私のような仕事を続けるにも、まずは体力と気力が横溢していなければならない。

「髙久さんはその年齢ですごいパワーですね」とその人に言われた。

 その年齢というのがちょっとひっかかるが、たしかに40歳から見れば、そう見えるのだろう。

 世代を超えてインスパイアの応酬をした、心地よい一夜であった。

(240318 第1214回)

 

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