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ココロバエ
偉大な日本人列伝

シロツメクサの花が咲いたら

2021.05.10

 「♪シロツメクサの花が咲いたらさぁ行こうラスカル……♪」かってテレビで上映されたアニメ『あらいぐまラスカル』の主題歌が突然私の体から噴出してきた。散歩の途中で寄り道した小さな公園は、手入れをされたパンジーなどの花壇のほかは小さな野草たちが競うように伸び始めていた。そこで私は円を描くように生え始めたシロツメクサの小さな集団を見つけたのである。

 1977年に大ヒットしたこのアニメは、主題歌は勿論ではあるが、何といってもあらいぐまラスカルの可愛い魅力にはまった子供たちが多く、本物までが輸入され、当分アライグマの人気は衰えなかったという記憶がある。

 子供向け番組に私までが夢中になったわけではないが、3人の小学生とのお付き合いということで、主題歌はいつも4人で声を揃えていい気分で歌ったものである。アニソンのお姉さんの声の美しかったこと、のびやかでとても心を開放してくれた。

 そして”シロツメクサ“は春の訪れの象徴、さあ、飛び出そう!と私たちも元気いっぱいに歌う。主人公の女の子は大きなリングを編んで頭に飾っていたっけ。私たちだって四葉のクローバーを夢中で探した若い頃の思い出がある。

 

 ごく最近になってこの愛すべき花にもう一つの情報が加わった。この名前の由来である。漢字にすると「白詰草」と書く。何でもこれは、江戸時代にオランダからの献上品を保護するために、乾燥したものを緩衝材として箱に詰められていたことが「ツメクサ」の名の由来。明治政府が牧草として積極的に導入したことで帰化植物として定着したとのことである。

 この嬉しい情報の出どころは、切抜き魔の私がせっせと新聞を切り抜いてきたことの成果である。『下野新聞』の一面の片隅に80×70mmの小さなカコミ欄があってタイトルは『レッツ!植物楽』。私が気づいて切り抜きを始めてから1年以上になるからもっと長く続いている名欄と言えよう。この小さなサイズの中に、その日に選ばれた花や実が忠実な色で描かれ、そして200字ほどの中に知りたい情報がギュッと詰められていて、文と画を描く二人の作家の植物愛が伝わってくる。

 最初は少し切り抜きが溜ったら、ボタニカルアートに魅せられ、描く腕も上達している義弟に贈るつもりであった。しかし今となれば私の大切な小さな愛蔵書となってしまったことに気づかされる。365枚はすでに溜っているはずである。

 シロツメクサのほかは全て野草とひとくくりにしてしまったが、小さな児童公園に小さな可愛い花たちがここかしこに姿を現している。ナズナ、セリ、ハルジオン……、まだいっぱい咲いているが名前が思い出せない。誇らしげに咲いているパンジーよりよほど素敵に見えるのは、私の近頃の気持ちの在りようなのだろうか。この花たちは競い合うでもなく、よく見つめるとそれぞれになかなか器量よしである。しゃがみ込んでじっくりと眺めてあげることが、生まれてきた小さきものたちへの感謝の気持ちになるような気がして、私はその場からなかなか離れられなかった。

 シロツメクサとは親類のような存在がレンゲソウではないかと思っている。密集して咲いているピンク色に染まった田園風景は、今ではめったに見かけることはなくなった。ビーズで作ったレンゲソウは一番の人気で、昨年は50鉢も作り個展に備えたものだ。本物と自然には叶わないまでも、この50鉢の群落が見てくださる人の思い出を優しく呼び覚ましてくれるだろうと思っていた。コロナ禍で発表は叶わなかったが、この一年の間にすべてのレンゲソウが誰かのもとに求められた。それぞれの場所で「私はレンゲソウよ」とつぶやいていることであろう。

 

 いま一番しっくりとくる、すらすらと口に出して朗読したい聖書の箇所がある。

 

「思い悩むな」(マタイによる福音書 6章25-34)

 ―だから、言っておく。自分の命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着ようかと思い悩むな。命は食べ物より大切であり、体は衣服よりも大切ではないか。空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。あなたがたのうちだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか。なぜ、衣服のことで思い悩むのか。野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし言っておく。栄華をきわめたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなたがたはなおさらのことではないか、信仰薄い者たちよ。だから、『何を食べようか』『何を飲もうか』『何を着ようか』と言って、思い悩むな。それはみな、異邦人が切に求めているものだ。あなたがたの天の父は、これらのものがみなあなたがたに必要なことをご存じである。何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはみな加えて与えられる。だから明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である。―

 

レンゲソウ

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