明治建築の遺産を一堂に
愛知県犬山市に明治村という、本物の明治建築を集めた一大テーマパークがある。同様のものとして横浜市にある三渓園も知られるが、スケールが桁違いに大きい。数年前、一度訪れたことがあったが、あまり時間がなかったためサクッと見て回った。明治村はサクッと回るにはあまりにもったいない。いずれ再訪したいと思っていたが、近くに所用ができたため、念願かなった。
明治村の特長は、建築物が〝本物〟ということだ。フェイクではない。明治時代、実際にあった建築物をこの地に移築したのである。
もちろん、建築物に足が生え、勝手にここまで移動してきたわけではない。誰かがこの難事業をやってのけたのだ。はて、誰なんだろう? という疑問は、入口近くにある解説で氷解した。
――戦後の日本は荒廃から立ち直る過程において過去の多くの貴重な建築を無思慮に破壊する事態を迎えた。それは「過去とは背に廻った未来である」ということを忘れた悲しむべき現実であった。その現実に対して、先人達が努力と名識によって営々と築き上げてきた明治建築を、破壊から少しでも救済し、保存してその文化を自ら語らせるために開かれたのが明治村である。
明治村は建築家谷口吉郎と実業家土川元夫によって発議された。二人は学生時代の僚友であり、企業活動としてではなく、日本の現状を憂うる同志として文化財保護のために青春の友情を温め立ち上がったのである。
土川元夫が社長であった名古屋鉄道は、現在の明治村の地、大和時代安閑天皇紀の入鹿屯倉の古代史の謎を秘めた自然ゆたかな入鹿池畔の広大な地を明治村のため提供した。(以下、続く)
なんて素敵な僚友であろう。大人になって仕事を成し遂げ、社会への問題意識を共有して私欲を離れて壮大な構想に取り組んだ。その結果、今では多くの人で賑わう名所となった。明治の記憶をリアルに遺したという点で、その功績は計り知れない。
フランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテルロビー館。大谷石が効果的に使われ、独特の品格を醸す

旧帝国ホテルの内部も緻密に再現されている

旧帝国ホテルのある部屋の天井。大胆なデザインに驚く

建物の一角に、なんとポーツマス講和条約で使用された長テーブルが保存・展示されている。ここで小村寿太郎やウィッテ(ロシアの全権大使)が激論を交わした

西郷従道邸(重要文化財)

西郷従道邸の一部。ここで外交交渉が行われた。けっして従道が贅沢をしていたわけではない

聖ザビエル天主堂(重要文化財)

その内部。ここまで再現したのは驚異

日本赤十字社の内部

(260621 第1325回)
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