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紺碧の将

五感を揺らす色の魔法

2019.12.03

私たちに備わっている五感と呼ばれる機能は、人間として生きる上でそれぞれが大切な役目を担っている。

全てがフル回転している人の人生はとっても素敵でパワフルなことであろう。

視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚を五段階でバランスチャートを作ったら、全てが5点だと正五角形になるわけで、ちょっとそれはあり得ない。

 

テレビで、パイプの音色に魅せられて、教会のパイプオルガンの調律に携わる職人さんの仕事ぶりを見た。

一台一台違う繊細な音色の秘密を解き明かす作業は、正に神業である。音色は気候の変化にも左右され、特に湿気は大敵だそうである。

この人の聴覚は並はずれて鋭く、聴覚指数は完璧の5を示すであろう。

私はといえばきっと視覚指標は5を提示するのではないかと思っている。

明けても暮れても小さなグラスビーズとの格闘である。私の目はしっかりとビーズ一粒づつの色を見極め、彩度明度の選択をしながら一個の作品を作り上げていく。

それはビーズで出来た花一本であり、あるいは花束として、またはアクセサリーとしてその本領を発揮する。……と私は信じて創り続けている訳であるが……

 

厄介なことに、私は自分の信じた色しか認めないため、何十年も続けてきたこの仕事なのに、結局は今は自分一人である。

生徒さんでにぎわった若い頃があったし、小さなお店を持って張り切っていたこともあった。

でも好みの色を選ぶのはその人の自由であって、「何でこの色なの?」と注文をつけることはできない。

結果として、教室展で飾られた花々は、それぞれの個性がぶつかり合い喧嘩をしている。美しい光景には見えなかった。

グラスビーズという人工の素材とカラは、暴れだすと収拾のつかない色の氾濫で溢れ返る。

会場を選び、照明にこだわっても、私が胸に描くエレガントでアンティークな雰囲気は生まれなかった。

カーテン、壁紙、デスク、ランプ、額、花器、鏡、食器……と生活シーンにかかわりのある物たちをも巻き込んで、<ビーズのある風景>を探し続けている。

 

一人で手を動かしている私は今はとっても自由である。私はわがままな人間であるとつくづく思う。

そうそう、肩凝りや腕の張りを払いのけ、辛抱強く私の仕事に付き合ってくれるこの両手、感謝してもしきれないくらい頑張ってくれている。

触覚も堂々の5点を差し上げたい!!

そして食べなきゃエネルギーは湧いてこない。それぞれにみんな援護の手を差し伸べてくれている。

 

 

 

クリスマスツリー

画像/大橋健志

 

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