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紺碧の将

ひたすらカッコいいロック

file.086『ワイアード』ジェフ・ベック

 ジェフ・ベックの訃報に接し、ショックを受けた。私を音楽好きにしてくれた恩人の一人であるから。これから、大物ロック・アーティストの訃報に接することが多くなるのだろう。寂しいことである。

「金縛り」と題されたこのアルバムは、『ブロウ・バイ・ブロウ』に続く、ヴォーカルなしのインストゥルメントの第2弾。録音メンバーはジェフ・ベック(g)、ナラダ・マイケル・ウォルデン(ds)、リチャード・ベイリー(ds)、ウィルバー・ボスコム(b)、マックス・ミドルトン(key)、ヤン・ハンマー(syn)。

 1976年当時、ロック界を席巻していた思想性を排除し、ひたすら「カッコいいロック」を追求した、目のさめるような一枚。大音量で聴けば、ロックとはこんなにもカッコいい音楽だったのかとあらためて思わざるをえない。クラシックやジャズにけっして引けを取らない。

 このアルバムが発売されて2年後、19歳のとき、武道館でのコンサートに行った。その時の演奏はいまでも語り草になっている。

 メンバーは、スタンリークラーク(b)、サイモン・フィリップス(ds)、トニー・ハイマス(key)。特にスタンリー・クラークのベースが凄まじかった。これがベースの音か? と体中に電流が流れた。本気で、このまま死んでもいいと思った。当時、チョッパー奏法(弦を叩いたり弾いたりしながらコードを弾く)は一般的ではなく、そのときが初体験だった。音の塊が武道館いっぱいに炸裂し、機関銃のようなギターと格闘する。サイモンのドラムもめっぽうパワフルだった。

 それでいて、スタンリーは自分の役どころをわきまえ、ベックが前面に出るべきところでは自分を抑える。言葉にできないほど凄まじいライブで、このときのパフォーマンスはロックファンの間で語り草になっている。その現場に立ち会えたということは、私の財産のひとつでもある。

 余談ながら、2010年頃、青山の「ブルー・ノート」で行われたスタンリー・クラークのライブを聴いた後、CDにサインをもらいながら、1978年のジェフ・ベックとの共演は素晴らしかったと言ったら、スタンリーはとても嬉しそうにし、握手をしてくれた。その後、パチリとツーショット。その写真も財産のひとつである。

 

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