再び、走る男に
最近、走っている。
以前は生活のなかに「走る」という行為が当たり前のようにあった。ホノルルマラソンに参加したこともある。海外旅行をしても、現地で走っていた。10キロ走で自分なりにタイムを追求していた。真夏の炎天下、近くにある陸上競技場の周りでインターバルトレーニングをしていた。1周、だいたい800メートルくらいだろうか。5本もやると、滝のように汗が吹き出した。今、同じことをしたら、まちがいなく熱中症になってお陀仏になっているだろう。
でも、若い時分は、その無茶が好きだった。たっぷり汗を流した後のビールが旨くて、ひたすら自分の体を痛めつけた。あの時のビールは、ゆうに1万円の価値があったと思う。
しかし、いつからだろう。走ることをやめたのは。走ることをやめて、もっぱらウォーキングだけになった。
歩くことも快適だ。じっくり風景が見られるし、有酸素運動にはもってこいだ。
ところが、歩くだけでは、なんとなく不完全燃焼だったということが最近、わかった。
そこで、走ることにした。
都内にいる時は新宿御苑の外周の内側を走る。1周約15分かけてゆっくりと。コースのほとんどは大木に覆われているので、カンカン照りでも日陰を走ることができる。
宇都宮にいる時は、栃木県総合運動公園を走る。ここは私の馴染みのコースだ。新宿御苑のような立派な大木はないが、そこかしこでスポーツに興じているのを横目で見ながらジョギング専用コースを走るのが好きだ。コースの両側にはサクラの木やイチョウの木が並んでいる。
もはや、スピードを競う年齢ではない。美しいランニングスタイルとはほど遠い。
でも、走ることは気持ちいい。その感覚を思い出し、いま、その歓びを噛みしめている。
(130808 第444回 写真は、新調したランニングシューズ)