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紺碧の将

大いなる空洞と甲州街道

2023.02.20

 ずっと前から疑問に思っていたことがあった。江戸の五街道のなかに甲州街道が入っていることが。

 言うまでもなく、なんらかの必要性があって五街道は整備された。例えば、東海道と中山道は江戸と京都を結ぶとか、日光街道は神君家康公を祀る日光東照宮への往還であるとか。

 ところが、甲州街道は「なぜ?」と思わざるを得ない。甲府にそれほど重要なものがあったのか、と。

 最近ある本を読んでいて、その疑問が氷解した。江戸城に一旦事が起きた場合、時の将軍が江戸城の半蔵門から脱出し、甲府城へ逃げるためのルートなのだと。半蔵門から先は四谷〜八王子へとつながる。途中、新宿の百人町と八王子などには鉄砲隊があって、敵の攻撃を食い止める備えができていた。

 はたして江戸城を攻める勢力などあったのか。考えられるところでは、伊達政宗がスペインと結託して江戸を攻めるとか……。政宗は江戸城の普請を行っているため、弱点も知っているであろうし。ま、それも絵空事か。実際、江戸城を攻めるなどという酔狂は現れなかった(当然だろう)。

 そんなわけで、半蔵門を見てみようと思い、皇居の周辺を歩いた。

 あらためて思った。当時の江戸城の盤石な守りと、現在、皇居があることの奇跡を。これほどの大都市に、開発の及ばないアンタッチャブルな空間があるのは、ひとえに日本の国柄であり、背骨であり、心の重心でもある。ロラン・バルトに言われるまでもなく、われわれはこの巨大な空虚を抱えているからこそ、日本人としての紐帯を保つことができている。

 

 それはともかく、五街道をすべて歩いて制覇せんと企んでいた友人が、去る1月、ついに踏破した。足掛け4年だとか。彼は時間を持て余している人ではなく、現役バリバリなのだ。

 私の周りには変わり者が多いが、彼はそのなかでも突出しているかもしれない。

 いいなあ、そういうヤツ。

 

当時の江戸城

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、半蔵門付近の皇居

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついでに楠木正成像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(220220 第1168回)

 

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