日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】
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紺碧の将

私は生きていることが好きだから他の生きものも皆んな好きです。

熊谷守一

「ぼくらはみんな生きている、生きているから歌うんだ……ミミズだって、オケラだって、アメンボだって……」と、生きものみんなが友だちなんだと、アンパンマンの生みの親のやなせたかしは歌にした。今の世の中に響かせたい歌だ。「クマさん」の愛称で親しまれた画家の熊谷守一も、この歌を聴いただろうか。

 草木が茂り放題の庭で、日がな一日動植物の観察をしていた熊谷守一の絵は、一見すると子供が描くような絵だが、実際には誰にも真似ができない。書でいえば良寛のような作風である。最小限の線と色でそこまで独自性を確立したのは、本質を捉えているからだろう。表情や手足の使い方、蟻の歩き出す足まで観察していたというから、生きものが好きでたまらなかったのだと思う。ゆきずりに住み着いた猫に、飼い猫以上の愛情を注いでいたと、息子の熊谷黄は語っている。家の出入りも猫の自由になるように、雨戸の隅に穴をあけたり、障子の桟の間の神がめくれるように切り込みを入れたり、猫の身になって猫が暮らしやすいよう心をくだいていたようだ。

 子供たちへの愛情もひとしおで、幼い孫が大工道具で遊んでいるうちにノコギリで家の柱を切り始めたのを止めようともせず、守一は嬉しそうに笑って見ていたという。

 自分が生きていることが好きだから、相手も生きていることが嬉しい。世界をそんな風に眺められたら、命の奪い合いはなくなるのではないだろうか。

(260603 第894回)

 

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