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私たちについて
紺碧の将

ものの見方を変えろ

2020.06.08

 いつの間にか、起業して34年目に入った。事業内容は一貫して広告制作業で、2002年から出版業務も始めた。

 現在、私の仕事の大半は原稿執筆と編集だが、ブックデザインもするし、ときどきWEBサイトのコンセプトメークやコピーライティングもする。本質的な表現にこだわるという点では首尾一貫しているつもりだ。

 そんな私が理想とする広告は、1997年、アップル社が展開した”Think different”キャンペーン。「考え方を変える」「発想を変える」という意味のシンプルな言葉を掲げた、理念型のキャンペーンだ。テレビCFでは、「クレージー」と呼ばれる人がたくさん出てきたあとに、詩情豊かなメッセージが流れ、最後の数秒だけアップルのロゴが出るというもので、商品はいっさい出てこない。拡声器を使ったかのように自社商品の特長をアピールし、他社商品との差別化を図る広告が氾濫するなか、きわめて風変わりな広告だった。

 そういうものに私がシビれないわけがない。本質的でシンプル、しかも力強い。世界中の主要なメディアでその広告キャンペーンを展開したのだから、桁外れの費用がかかっただろう。

 今でこそ、アップル社はGAFAの一角を占めるほど巨大な存在になった。しかし、当時、同社は青息吐息の状態だった。運転資金が残り2週間分しかなかった時期もあったという。

 だいたい、グラフィックデザイナーはマック使いだ。私もずっとマックひとすじで、いまだにウインドウズは使えない。なんというか、そそられないのだ。

 そのキャンペーンを行った数年前、創業者であるスティーヴ・ジョブズはアップル社を追い出されていた。しかし、会社を立て直すにはジョブズを復帰させる以外ないと考えた経営幹部は、ジョブズを呼び戻し、くだんのキャンペーンを計画したのである。当時、ライバルのマイクロソフト社に資本を注入してもらい、一時的に経営破綻の危機は免れたものの、会社の理念を謳っただけの、雲をつかむような広告キャンペーンに莫大な予算を使う余裕はなかったはずだが、ジョブズはためらうことなくやってのけた。

 その後、アップル社は独自性のある製品を発表し続け、一気に業績を回復させていったiMac、iBook、iPod、iPhone、iPadなどの商品群は、アップル社の理念の現れである。

 余談だが、ジョブズが「クレージーな人たち」の一人として、どうしても登場させたかったが、ついに実現できなかった人がいる。南アフリカで黒人最初の大統領になったネルソン・マンデラである。私はユッスー・ンドゥールの世界デビュー盤「ネルソン・マンデラ」を愛聴し、ケープタウンを訪れた際はマンデラが30年近くも収容されていたロッベン島にも行ったことがあるくらいマンデラに崇敬の念を抱いていたが、ジョブズも同じだと知って、妙に嬉しかった。

 本質を追求する会社が正当に評価される。「死ぬまでに読むべき300冊の本」で紹介したイヴォン・シュイナードの例もそうだが、世の中まだまだ捨てたもんじゃない。

 

広告のキャッチコピー

 

 

 

 

 

 

 

 

iMac

 

 

 

 

 

 

 

 

iBook。私もこの色を買った。

 

 

 

 

 

 

 

 

G4 Cube。形がユニークで、今も保管している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の愛機はMacBook Proである。

 

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(200608 第998回)

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