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人間の根っこの話

2020.01.27

 性根とはなんだろう?

「あいつは性根が腐っているからダメだ」などと使われる。名前のとおり、人間という性の根っこにあたるものと解釈している。

 もちろん、人間の目で見ることはできない。拙著のタイトルにもあるように「葉っぱは見えるが根っこは見えない」である。

 性根をよくするにはなにが必要なのだろう(反対に、性根が悪い人にはなにが欠けているのか)。これはどう考えても、母親による愛(慈愛)に行き着く。幼少期に母親からたっぷり愛された人は、性根がきちんと育まれ、やがて人間の基礎として根づき、芽を出していく。父親にはなかなかできないことだ。そのかわり、父親は幹を支えることによって、人生の指針を与えることはできるのだと思う。

 こう書くと、ジェンダーフリーの人たちから批判を浴びそうだが、もともと男と女の役割はちがっていて当たり前。そこに差がないと考えるほうが不自然だ。

 さまざまな樹々を見るうち、この樹の根っこはどんなふうになっているのだろうと想像することが習い性になった。彼らはなに食わぬ顔をして、毎日同じ場所で同じような容姿を保っているが、その実、地中では激しい〝領土争い〟が繰り広げられているのではないだろうか。

 本サイト「死ぬまでに読むべき300冊の本」で紹介した『植物の神秘生活』によれば、ムラサキウマゴヤシの根は地中12メートルも伸びるという。ライムギの支根は1300万本以上、それらをつなげると、なんと全長600km。支根には微細な根毛が約140億本生えていて、それらの全長はほぼ地球の両極間に相当するという。想像を絶するネットワークだ。そういうことを前提として、人間ができないことを平然と行っているのだ。たとえば、アメリカスギは90メートル以上も樹液を吸い上げる。人間が設計した最良の汲み上げポンプでさえその10分の1以下の高さしか吸い上げられないのに……。樹木は根っこの重要性を知っているのだ。人間のように、目先の獲物が欲しくて安易な策を弄することはない。「すぐに得たものはすぐに失われる」ことを知っている。

 だから、彼らの教育は、厳しい環境に生き残れるよう、じっくり育てることに主眼を置いているかのようだ。

 同コラムで紹介した『樹木たちの知られざる生活』によれば、ほとんどの子樹は親樹の近くに発芽するが、親樹は子樹を早く成長させないために、光を遮るという。早く成長した樹は早死にするからだ。ゆっくり成長した樹は年輪も詰まっていて柔軟性もあるため嵐がきても折れにくいし、抵抗力も強いため菌類に感染することも少なくなる。

 すごい!

 どうしてそんなことをするのかといえば、生存の厳しさを知っているからだ。なんと、一本のポプラが生涯につくる種の数が約10億個であるのに対して、きちんと育つのはたった一本しかない。

 命というものの不思議をあらためて考えさせられる。

 

本サイトの髙久の連載記事

◆ネコが若い女性に禅を指南 「うーにゃん先生の心のマッサージ」

◆「死ぬまでに読むべき300冊の本」

◆「偉大な日本人列伝」

 

髙久の近作

●『葉っぱは見えるが根っこは見えない』

●『父発、娘行き』

 

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●「美し人」最新記事 書家・齋藤翠恵さん

●「美しい日本のことば」

(200127 第965回 写真はマチクの根)

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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