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ブロンズに魂を吹き込む 〜中村晋也の世界

2016.07.28

中村晋也作品 鹿児島へ行ったおり、思いがけず彫刻家の中村晋也氏に会うことができた。

 私にとっては大久保利通像をつくってくれたというだけで特別の方だが、実際にお会いすると、温顔の奥に深い精神性の泉が滔々と湧き出でているのが感じられた。
 眼が澄んでいる。御年91歳だそうだが、少年のまなざしのようでもある。かといって、一瞬にして岩をも射貫くような鋭い眼光を放つ。歩んできた道のりが凝縮しているような風格があった。
 翌日、中村晋也美術館を訪れた。とりわけ印象的だったのが、「釈迦十大弟子像」や「薬師寺西塔釈迦八相像」「祈り」など仏教をテーマにした作品だ。インドやネパールに何度も足を運んで取材を行い、祈りを捧げてから制作にとりかかるという。現地の空気をつかみ、作品に反映させるというリ釈迦十大弟子アリズム。なかなか真似のできることではない。仏教への理解も生半可ではなさそうだ。
 ワーグナーの『ニーベルンの指環』を題材にした大作もある。あの「ワルキューレ」のかん高い女声が聞こえてきそうだ。東西の文化に通暁しているのは一目瞭然だ。
 歴史上の偉人にくわえ、稲森和夫氏など現存の人物の作品もあった。目の前に立つと、すぐにでも動きそうな気配が漂っている。人体を忠実に再現していることは言うに及ばず、どうやったら魂を吹き込むことができるのか、じつに不思議だった。
 同美術館には中村氏の弟子たちの作品も多数展示されていたが、師の作品との違いは歴然としていた。おそらく、中村氏の作品が近くになければ、どれもそれなりのレベルではあるのだろう。一流とその手前には大きな川があることを痛感した。
 現在、中村氏は大作に取り組んでいる。人間はいくつになっても深化・成長できるということを教えてくれているようだ。
(160728 第653回 写真上は「祈り」、下は「釈迦十大弟子像」の一部)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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