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紺碧の将

本ってなんだろう?

2024.02.14

 『紺碧の将』を刊行して以来、「本ってなんだろう?」と考える機会が増えている。

 モノとして見れば、ただ紙を束ねただけの物体である。無数にある商材のひとつともいえる。

 が、それだけで片付けたくないという意識がある。

 『紺碧の将』のなかで、上杉謙信が小太郎に「書物とはなんであろうか」と問うシーンがある。

 小太郎は考えた末、こう答える。

「著した人の魂が宿るものと心得ます。それゆえ書物を読むことはその魂に触れ、自らの魂を磨くことでありましょう」

 それを聞いて謙信はさらに問う。書物を読めば、己の魂が磨かれるのかと。

 小太郎は答える。

「わたくしはいにしえの賢人の魂に触れることによって一生を善きものにするための道しるべを得た思いでございます」

 さらに謙信は、書物を読めば一生がうまくいくということかと問い、小太郎は、「書物はひとつの道しるべにすぎず、あとはそれを読む者が活かすか否かではないか」と答える。

 小太郎は創作上の人物だが、書物によって自分の道を切り拓いてきた人間である。それだけに書物への愛着はなみなみならぬものがある。

 

 書物は著した人の魂と読む人の魂が触れ合うための媒介、そう私は考える。だから、まったく異なる時代に生きた者同士でも魂の交流をすることができる。そういうものを〝雑貨〟のひとつにはしたくない。

(240214 第1210回)

 

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