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ココロバエ
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いわゆるひとつの敗北宣言

2020.09.30

 市ヶ谷のChinomaを閉めたことで、ついにアレを買うことになった。アレとはあれ、言いたくないが、老眼鏡である。

 なんでChinomaと老眼鏡が関係あるの? と思う人もいるだろう。

 私の仕事の愛用機はMacBook Pro。4年前まで、デスクトップ型のiMacを自宅、Chinoma、宇都宮と3台備えていた。それぞれ最新のデータをUSBメモリに入れて持ち運んでいたが、それだとデータを移し忘れたりする。なによりソフトの使用料がかさむ。ご存知のように、いまはハードよりもソフトの使用料の方が高いのだ。

 そこでノート型のMacBook Pro(13インチ)に変えた。そして3ヶ所に大きめのディスプレイを置き、それに映して仕事をしていた。ノート型とはいえ小さい方が持ち歩きに楽だし、どうせ大きいディスプレイに映して作業をするのだから小さいサイズでいいと。

 ところが、Chinomaを失ったことにより、仕事の環境が変わる。今後はどこかのフリースペース施設の会員になり、そこで作業をするつもりだが、まさかディスプレイを持ち歩くわけにはいくまい。かといって、13インチのディスプレイで細かい作業をするのはリスクがある。メールの5と6と8を読み間違える可能性だってある。

 本来なら、61歳のいま、老眼鏡のひとつくらい持っているのが当たり前だろう。私はもともと視力が良く、今でも1.5ある。視界でかすんでいるところはない。くっきりスッキリなのだ。

 ところが、10年くらい前から近くだけアヤシクなってきた。朝一番、新聞の字が読みにくいし、薄暗くなるとお手上げだ。レストランで細かいメニューを見ても、価格がはっきり読めない場合がある。それでも老眼鏡を買わず、裸眼で通してきた。読書をするときも裸眼だった。

 しかし年貢の納め時といおうか、ついに敗北宣言をしたわけである。

 使ってみて、びっくり。細かいものがはっきり見える。新聞の株価欄さえ見える(興味はないが)。薄暗くても見える。

 いっぽう、これはいかんと思った。これに頼ったら、ますます目が悪くなる、と。だから、昼間本を読むときはあくまでも裸眼で読み、どうしても見づらいときだけ眼鏡の力を借りることにした。

 人間、楽をしようと思えば、いろんなものがある。「これが便利ですよ、これが楽ですよ」は悪魔の囁きだ。

 そんなわけで、しばらくは目の衰えと格闘することになる。局地戦で敗北宣言をしたものの、敵の軍門に降るまではまだ時間がある。

 

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髙久の著作

●『葉っぱは見えるが根っこは見えない』

 

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https://www.umashi-bito.or.jp/column/

(2009030  第1026回)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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