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滝が好きなのだ

2020.05.06

 いきなりバカボンのパパの口調でタイトルをつけてしまった。バカボンのパパはいまでも憧れの人だ。同級生たちが「巨人の星」や「あしたのジョー」に熱中していた頃、私はどうにもスポ根ものに入り込めず、「天才バカボン」を見ていた。

 バカボンのパパの名前は「バカボンのパパ」らしいが、だとすると、命名した人(親?)はかなり先見の明があった。なぜなら、将来、この子はバカボンのパパになると予測したのだから。親の予測どおり、バカボンという子の父親になったバカボンのパパもまた偉い。
 それにしても、学校でいじめられなかったのだろうかという疑問がわく。子供なのに「パパ」がつくのだ。そもそも出生届は受理されたのだろうか。だって、生まれたばかりの子に「バカボンのパパ」ですよ。いくらなんでもムチャクチャという感じがする。
 こうして、バカボンのパパにまつわる謎は深まるばかりなのだ。

 

 なぜ、滝が好きなのか。それは地球が生き物だと明快にわかるから。自然現象とは、地球(あるいは宇宙)という生き物の生態である。

 世界の3大瀑布といえば、アメリカとカナダ国境のナイアガラの滝、ブラジルとアルゼンチン国境のイグアスの滝、ジンバブエとザンビア国境のヴィクトリアの滝を指す。なんとなくナイアガラの滝は思い立ったらいつでも行けそうな気がしてそのまま行っていないが、イグアスの滝とヴィクトリアの滝は訪れた。いずれもかなり長い移動時間を要する。

 残念ながらイグアスの滝を訪れたときは乾期で水量が乏しく、あの「悪魔の喉笛」と異名をもつ滝口もさほどの水しぶきはあがっていなかった。それでもボートに乗って水が落下するポイント近くまで行き、水が岩石のように落下する迫力に驚愕した。真下に入って滝に打たれる修行をしようものなら一瞬にしてあの世へ行けるにちがいない。

 ヴィクトリアの滝は豪快だった。爆音をあげながらシャワーのような水しぶきが宙に舞い、横殴りの風に乗ってぶつかってくるから、雨合羽をまとっていなければ、たちどころにずぶ濡れになる。ヘリコプターに乗って滝全体を上空から眺めたが、まるで地球の傷口のようでもあった(右上写真)。眼下に見ながら、心臓の鼓動が早くなるのがわかった。

 3大瀑布といえば、日本画家の故松本哲男さんを思い出す。50代の10年間、それらを描くのに費やした。まさに、滝にとり憑かれた人だった。滝壺近くで絵を描くなどできるはずもないが、彼は自分でつくった特製の「水よけシールド」を被ってひたすら描いた。取材のとき、体育館のようなアトリエを見せてもらったが、そこには巨大な絵が何枚も並んでいた。「でっかい滝を描くには、でっかい絵じゃないとダメだ」という言葉が印象的だった。

 下が「ヴィクトリアの滝」の一部分、そしてその下がスケッチである。素描とは思えないほど、豪快な一枚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 松本氏は死ぬほど酒が好きで、それがアダになってしまったが、彼が遺した大作はこれからもずっと残る。幸せな画家というべきだろう。

 

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(200506 第990回)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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