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紺碧の将

はっけよい! 大相撲

2020.01.15

 ここ数年、大相撲に魅了されている。

 以前はスポーツ観戦といえば、野球とサッカーだった。それらが遠のいた原因は、試合時間が長いことだ。サッカーは正味約1時間半、野球にいたっては3時間を超えることが当たり前。その時間をほかのことに使ったら、いったいどれだけのことができるだろうと思う。

 余談だが、以前、知人が「ゴルフはいいよ。一日時間をつぶせるから」と言った。

 驚いた。「時間をつぶせる」という発想がてんでわからない。なぜ、時間を〝つぶす〟必要があるのか。睡眠時間が長いこともあるが、私はつねづね時間がもっとあればいいと思っている。まして、人生の後半にさしかかり、持ち時間が減っていくなかで、いかに大切に時間を使うかは重要なテーマである。

 前置きが長くなったが、その点、大相撲はいい。幕内の中盤くらいから見てもせいぜい1時間弱。その間に何番もの真剣勝負を見ることができる。しばしば「歳をとると相撲が好きになる」と言われるが、私も歳をとったのだ。

 一昨年の暮れ、『Japanist』最終号のための取材で行司の最高位、式守伊之助さんのお話をうかがった。長年、大相撲の世界にいる彼がしみじみ言っていた。「十両以上はすべて神の領域です」と。一般的には、十両は〝格下〟のイメージだが、相撲を知る人から見れば、とんでもないことらしい。

 調べてみると、番付にはよく知られている幕内、十両のほか、幕下、三段目、序二段、序の口の6つがある。「そんなこたぁ、序の口だぜ」とも使われるように、まずは序の口からスタートする(もちろん、序の口になれない力士が無数にいる)。関取と呼ばれるのは幕内と十両だけで、70人くらいしかいない。つまり、全国から集まってきたトップ力士のうち、関取になれるのはそれくらいしかいないということ。

 そうなるためには想像を絶する厳しい稽古に耐えなければいけない。股関節を柔らかくする股割りに始まり、大の男も泣くほど厳しいとはよく言われること。足腰や上体の強さ、突進力、自分の良さを引き出す多彩な技など、すべてにおいて高いレベルでなければ番付を上げることはできない。加えて、伝統的で閉鎖的な環境のなかで努力し続けられる精神力も要求される。

 2年ほど前だったか、朝乃山と豊山の取り組みを見て感動した。若者らしく真っ向勝負で、見ながら思わず力が入ってしまった。以来、朝乃山に注目してきたが、あれよあれよという間に優勝してトランプ大統領から賜杯を受け、三役に上がるや一場所だけで関脇に昇進した。小手先の技を使わず、四つ相撲を貫いているところが爽快だ。

 ほかにも魅力的な若い力士が多い。彼らが切磋琢磨し、どんな成長を遂げるのか、楽しみだ。

 

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(200115 第962回 写真は高田川部屋の稽古場)

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