第1回タカタラ賞、発表!(その1)
日本の経済力はずっと落ち続けている一方、成熟社会に入っているという実感がある。例えば、スポーツや芸術における日本の若い世代の活躍である。サッカーの日本代表チームのほとんどはヨーロッパのビッグクラブで活躍しているし、野球選手がMLBに挑戦するのは珍しいことではなくなった。クラシック音楽界における日本人の台頭は目を見張るものがある。おそらく言語の壁さえなければ、日本の小説は世界中でもっと読まれているだろう。つまり、芸術やスポーツに全精力を注ぐことのできる(裏を返せば、生活に余裕のある)人が増え、それによって各界の裾野が大きく広がり、世界で通用する逸材が数多く輩出されるようになったといえるだろう。まさに成熟社会の賜物である。
このことは、美術界にもいえる。とにかく絵を描く人の数はうなぎ登りである。美術の公募展の会場は、国立新美術館と東京都美術館が大半だが、東京都美術館では年間200近くの公募展・グループ展が開かれるという。
そういう背景があって、春と秋の公募展は楽しみである。ちょっと昔は高校の美術部の延長のような作品が多かったが、今やプロの画家もお手上げになるくらいのレベルがゴロゴロしている。かなりハイレベルの作品を創作し続けていても、ずっと無名の人もいる。
そこで、今回から春と秋の公募展のなかから私が独断で選んだ作品を発表することにした。名づけて「タカタラ賞」。名前の由来は聞くまでもないだろう。
それぞれの公募には、審査員が選んだ受賞作があるが、私はそんなことにはおかまいなしで勝手に自分の美意識(というものがあれば)と好みで入選作を選んだ。もちろん、タカタラ賞に選ばれたからといって、いっさい評価にはつながらないし、名誉にもならない。もちろん、賞金も賞品もない。
今春は創元展、春の院展、水彩画連盟展、モダンアート展、光風会展、春陽展、春季二科展と7つの公募展に足を運んだが、第1弾として創元展から入選作を発表したい。公募展はすべて撮影が可能であるため、私は気に入った作品を写しているが、写真に写したいと思う作品がいくつあるかも、その公募展と私の相性を測るひとつの尺度にはなると思っている。よって、何枚写したかも記すことにする。
まずは創元会主催の「創元展」から。撮影点数は47点。創元会は今年で85年を迎えるという歴史がある。
藤澤和子「北の春風」。北国の春風をこんなふうに表現している

澄川紀美子「色あせてもなお」。朽ちていくものの美しさに着目しているところがいい

中野俊章「コッレ・ディ・ヴァル・デルサ」。建物群と公園の色彩の対比がいい。構図のセンスも抜群

林勇介「swing」。冬の永い日陰を黄色で表した色彩感覚が光る

谷貝文恵「コル・テンポ」。有本利夫の影響を感じるが、独自のスタイルに昇華している

奥田敬介「秋晴れ」。どうもネコが描かれている絵には弱いようだ

太田時子「庭園」。なんとも楽しげな雰囲気が伝わってくる。一見、乱雑な線がよく計算されている

望月淑江「多幸万幸」。タコだけを描いて多幸感を表現する大胆な発想が素晴らしい

(260425 第1311回)
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