どんなに時代が変わろうとも、本が人類の知的財産であることに変わりはありません。
少年の時分より、本を師と仰ぐ髙久 多樂がさまざまなジャンルから独断と偏見で選んだ300冊の本。
本選びの際の参考書として、活用してください。【テキスト/髙久 多樂】
Topics
file.177『松下政経塾塾長講話録』松下政経塾編 PHP研究所
本書は、松下幸之助が85歳のときに設立した松下政経塾が始まって間もなく、第1期生に対して行った6つの講話を収めたもの。この講話録を読むと、幸之助のスケールの大きさがわかる。第1期生…
file.176『木』幸田文 新潮社
〝法隆寺の鬼〟と言われた故西岡常一の唯一の内弟子・小川三夫氏に取材したとき、小川さんは幸田文さんのことを語ってくれた。ここでは省くが、幸田文さんは法輪寺の再建にとてつもなく大きな役…
file.175『冬の標』乙川優三郎 中央公論新社
乙川優三郎が『生きる』で直木賞を受賞した後、初の作品。発表された2002年に読んで深く感動したものだが、22年の時を経て再読したとき、その感動が数倍も数十倍も大きく深くなっていた。…
file.174『日本人には塩が足りない』村上譲顕 東洋経済新聞社
ずっと思っていた。塩と糖を悪者にしていては、けっして健康にはなれないと。しかし、世の中は減塩・脱糖の大合唱。本書の帯にあるコピーが的確に本質を突いている。「減塩が元気と健康をそこな…
file.173『赤と黒』スタンダール 小林正訳 新潮文庫
23歳のころ、腎臓病を患い、2ヶ月以上も入院していたことがあった。痛みはなかったが安静を強いられた。8人部屋のほかの患者とはほとんど話をせず、ただベッドの上で過ごす日々は退屈で、夜…
file.171『龍宮』照井翠 コールサック社
「なんなのだ、この句集は!」読み進めていくうち、戦慄が走った。気に入った句や気になった句に付箋をつけていたのだが、気がつくとほとんどのページに付箋が貼ってあった。これでは付箋の意味…
file.170『新書源』二玄社
隠れた名著といえば、辞書の類を挙げなければならない。白川静の『常用字解』はその最たるものだが、ここで紹介するのは書家におなじみの『新書源』。1393ページもある大著だが、ずっと眺め…
file.169『砂の女』安部公房 新潮文庫
人間は環境に順応する生き物、といえば聞こえはいいが、別の表現をすれば、環境に飼いならされる生き物、ともいえる。この作品に通底する不気味さをどうとらえればいいのだろう。ある意味、この…
file.168『決定版 日本史』渡部昇一 育鵬社
折りに触れ、何度も読んでいる。なにより渡部昇一氏の歴史に対するスタンスに共鳴できる。曰く「歴史とは単なる事実の積み重ねではなく、虹のようなものである。歴史的事実という水滴を、日本と…