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紺碧の将

歳を重ねるごとに色気が増す男のロック讃歌

file.058『グレート・ロック・クラシックス』ロッド・スチュワート

 歳を重ねるごとに色気が増す男がいる。その筆頭がショーン・コネリーだと思っているが、ロッド・スチュワートもその一人だろう。

 若い頃の彼は、いかにも〝チャラ男〟で、さほど好きではなかった。それなりに聴いてはいたが、あの軽さが鼻についた。まさか、のちにイギリス政府からナイト爵位を授かることになるとは夢にも思わなかった。

 しかし、皮肉なことに、彼が自分の作曲能力に限界を感じ、名曲のカヴァーに取り組み始めてから、俄然魅力が増した。2002年以降、「ザ・グレート・アメリカン・ソングブック」シリーズを5枚、ソウルを集めた『ソウルブック』(ソウルとは思えない曲も入っているが)、そしてここに紹介する『グレート・ロック・クラシックス』の7枚を発表した。

 アトランティック・レーベル系のリズム&ブルースやジャズの名曲揃いだが、いずれも肩の力が抜けていて、いい感じのロッド・スチュワート節になっている。彼は英国スコットランドの生まれだが、アメリカの歌をこよなく愛していることがひしひしと伝わってくる。そして、アメリカには世界共通語ともいえる歌がたくさんあるということを再認識させられる。事実、「ザ・グレート・アメリカン・ソングブック」に収められているような曲を世界のどこでリクエストしても、演奏してくれる。

 そんなロッドのカヴァーでもっとも板についているのが、この『グレート・ロック・クラシックス』だ。タイトルの通り、ロックの名曲をカヴァーしたもの。私は、収められた14曲の半分以上をリアルタイムで聴いているため、ロッドの選曲にいちいちうなずいてしまった。

 収録曲は以下の通り(/の後が、オリジナル)

 

1「雨を見たかい(Have You Ever Seen the Rain)」/クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル

2「愛に狂って(Fooled Around and Fell in Love)」/エルヴィン・ビショップ

3「スタンド・バイ・ユー(I’ll Stand By You)」/プリテンダーズ

4「スティル・ザ・セイム(Still the Same)」ボブ・シーガー

5「イッツ・ア・ハートエイク(It’s a Heartache)」/ボニー・タイラー

6「デイ・アフター・デイ(Day After Day)」/バッドフィンガー

7「ミッシング・ユー(Missing You)」/ジョン・ウェイト

8「父と子(Father & Son)」/キャット・スティーヴンス

9「我が愛の至上(The Best of My Love)」/イーグルス

10「イフ・ノット・フォー・ユー(If Not for You)」/ボブ・ディラン

11「ラヴ・ハーツ(Love Hurts)」/エヴァリー・ブラザース

12「涙の想い出(Everything I Own)」/ブレッド

13「クレイジー・ラヴ(Crazy Love)」/ヴァン・モリソン

14「レイ・ダウン・サリー(Lay Down Sally)」/エリック・クラプトン ※この曲のみ日本盤のボーナス・トラック

 

「雨を見たかい」はさまざまなアーティストがカヴァーしているが、ロッドの歌は出色の出来といえる。Have you〜をスコットランド訛りで「ハビャ」と発音しているところもオモシロイ。

 エルヴィン・ビショップは「愛に狂って」1曲だけの一発屋だが、学生時代、私はこの曲が大好きだった。

 ボニー・タイラーは〝女ロッド〟と言われるくらい、声質がロッドと似ているが、「イッツ・ア・ハートエイク」を聴き比べると、迫力は彼女のほうが上。いやはや肉食系の女性である。こんな人が彼女だったら、いまごろ食べられているだろうな。

 ボブ・シーガー&シルヴァー・バレット・バンドはシブい。いい味出している。

「ミッシング・ユー」はジョン・ウェイトの作品だが、後にアリソン・クラウスともデュエットしていて、これもオススメ。

「ラヴ・ハーツ」はエヴァリー・ブラザースがオリジナルだが、平板すぎる。ナザレスの高音ギリギリの歌いっぷりが印象に残っているが、ロッドは淡々と歌いながらも、原曲の魅力をいささかも損じていない。

 その他、収録曲のすべてが文句なしにいい。 

 さらに! ジャケットの写真を見て欲しい。ダメージの入ったデニムに、ストライプの紫のジャケットを着こなし、〝お行儀よく〟片脚を肘掛けにかけている。このいでたちでサマになる人はそうそういないだろう。歳を重ねるごとに〝お茶目なちょいワルおやじ〟になっていくロッド・スチュワートの面目躍如である。

 

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