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悪いコピーの見本

2011.05.16

 最近は自分でも自分が何屋なのかわからなくなることが多い。ご職業は? と訊かれ、とっさに答えようとすると、すぐに出てこないのだ。

 案外知られていないのだが、私の本業は広告の企画・制作を行う会社の経営である。1987年創業だから、すでに25年目になってしまった。それまでの自分をふりかえれば、よもや自分が「社長」を25年近くも続けるハメになるとはオドロキ桃の木である。

ということで、私は広告の制作にかけては今でもじゅうぶん通用すると思っている。その企業にはどのような広告が有効か? その際、どのような方法で、そのイメージは? あるいはどのようなデザイン、コピーか?……等々、自分で言うのもナンだが、アイデアだけならサクサクッと作れてしまう。

 そういう目で世の中を見て、不愉快になる広告がときどきある。右に掲載の英会話教室の広告はその最たるものである。

 

先生に

合わせてもらおうよ。

お金払ってるんだから。

 

 なんだか横柄そうな若いコが右肩に黒猫を乗せ、不しつけに主張している様子が伝わってくる。

教えてもらう立場にありながら、「お金払っているんだから」という言い方が気にくわない。言うまでもなく、お金を払っているのは教えてもらうことへの対価である。お金を払いさえすれば何を要求してもいいのだろうか? それじゃ、ホリ★モンと同じになってしまうだろう。

 もちろん、これはこのポスターの世界であって、モデルになったこの子が悪いわけではない。もしかすると、実際は礼儀正しい子かもしれない。

 悪いのは、こういうコピーを書くコピーライターであり、それを何の疑問もなく通す制作プロダクション、広告代理店、そしてクライアント(依頼主)である。ははーん、この会社はこの程度か……、と即座に見下げてしまう。

 

「お金払ってるんだから」…、なんと嫌な響きの言葉だろう。昔、「お客様は神様です」と言った人がいたが、勘違いだ。客は神様ではない。そんなことを言っているから、クレーマーヤモンスターペアレンツが登場したのではないか? 私は自分がお金を払う時も、自分が神様だとは髪の毛の先ほども思っていない。

 生徒の都合に先生が合わせるというサービスを売り物にしたいのなら、もっと他にいい表現があるだろう。このコピーは、消費者に媚び媚びである。

 いやだいやだ、このコピー。

(110516 第251回 写真は電車の中のその広告)

 

 

 

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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