多樂スパイス

引き算の真理

2011.03.03

 いままでいた人が忽然といなくなってしまった。あるいは逝ってしまった…。

 そうなった時、その人の欠落感(=存在感)はいやがおうにも増すはずだ。

 つまり、それを感じたいから、それを省く。そういう真実をいにしえの日本人は知っていて、「水を感じたいから水を抜く」という離れ業をやってのけた。

 枯山水。

 私たち日本人はそこに川の流れを感じることができる。

 「ここに実際に水が流れていたら、どんな感じになるのだろう」。そういう気持ちが、心の中に絶景を創り出す。実際に目の前にその実体があろうがなかろうが、心の中に素晴らしい自然を感じることができたら、その人は自然を味わっていることになる。そういうことを知っていたなんて、なんとわれわれの祖先のセンスは洗練されていたのだろう。

 

 今、私を取り巻く人の渦は大きくなるばかりである。それらは偶然の出会いだとは思えない。

 「うそだろ? ただの偶然だよな」と思いたくなるような出会いがたくさんある。これが天意でなくて何であろうか。

 そういう人たちがいつまでもいると思うなよ、と枯山水は教えてくれる。一期一会を大切にしなさい、と。

 “行く川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず 淀みに浮かびたるうたかたはかつ消えかつ結びてひさしくとどまりたるためしなし 世の中にある人とすみかとまたかくのごとし”

 私が好きな『方丈記』の冒頭の言葉だ。今、その言葉の意味を噛みしめている。

(110303 第233回 写真は竜安寺の庭)

 

 

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

多樂塾

SPONSORED LINK

ココロバエ

Topics

記事一覧へ
Recommend Contents
このページのトップへ