多樂スパイス
HOME > Chinoma > ブログ【多樂スパイス】 > 「1億総評論家」の一人になる前に

ADVERTISING

私たちについて
紺碧の将

「1億総評論家」の一人になる前に

2020.05.18

 外出自粛が続き、イライラしているのか、無責任な政権批判が横行している。政権は特権を持っているのだから、どんな文句を言われても当然だと思っているのだろう。それはそれで一理あるのだが、かといって、排泄行為にも等しいような罵言を浴びせていいというものではない。

 はじめに私の立ち位置を明確にしたいのだが、私は安倍政権の親衛隊ではない。安倍首相の政治思想には共感することが多いものの、注文をつけたいこともけっこうある。(自民党幹部ら)周囲に配慮しすぎるのも、やたら国民に謝罪するのもおかしい。どの国のトップリーダーを見てもわかるが、国民にペコペコ頭を下げている人などいない。国民の代表として日夜奮闘しているのだから、もっと胸を張って正々堂々としてほしい。野党やメディアが、顕微鏡で見なければわからないような些細なことを針小棒大にし攻撃しているが、そんなものは柳の枝のごとくさらりとかわせばいい。政権の任期もあとわずか。これまで地球を何周もして各国の首脳たちと信頼関係を築き、国に資してきたのだ。誇りを胸に、自らの行動を貫いてほしい。

 

 民主主義において、政権批判の自由は保証されている。しかしその前に、本来は国民一人ひとりに政治を担う義務と責任があるということを忘れてはいけない。それが国民主権の大原則である。だから政権批判をする際は、稚拙であっても代案を立てなければならない。それもなしにただ批判だけするのは民主主義の本分に反する。「なんでも反対」の共産党が民主主義の本分に反しているのはその点にある。例えば、日米同盟反対、自衛隊反対と主張するのであれば、それに代わる安全保障政策案を提起する責任があるのに、それをせず、ただ批判に終始している。

 国民全員が国会議場に集まって議論することはできない。だからこそ、国民の代表として代議士に託して国会に送り込んでいるのだ。代議士の「代」という字をあらためて見てほしい。

 中国のような国家主義的な強制策を実行できない以上、あくまでも国民に対して「お願い」するしかない状況のなか、安倍さんや小池さんはじめ、多くのリーダーはよくやっていると思う。そして、ほとんどの国民に良識があり、規律を守っているからこそ、欧米のように感染が爆発していないのも事実だ。しかし、一定の割合でどうしようもない人がいる。「なにをしようがオレの勝手だろ」と主張して恥ずかしさを感じない人たちだ。

 プラトンは「国家論」ですでに民主主義の限界を論じている。あらゆる政治体制のなかで、民主主義は独裁政治の次に悪い政治制度だと。理由は、民主主義国家では善いものと悪いものが平等に扱われ、どんな勝手も許されるから社会善が小さくなるのだと。

 ややこしい政治論になってしまったが、要は国民一人ひとりが、「本来は自分が政治を担うべき義務と責任がある」という自覚をもち、社会善を増大させる方向へ力を合わせられるか否か。国民主権という耳ざわりのいい言葉には、そういう苦味も含まれていることを忘れてはいけない。

 今後、米中の対立は一気に深まっていくにちがいない。アメリカは、マイナス要素も覚悟のうえで中国との貿易を大幅に減らすはず。そのとき、アメリカが抜けた〝穴〟に同盟国が割り込むことを許さないだろう。つまり、アメリカにつくか中国につくか、踏み絵を突きつけられるということ。安倍首相はトランプ大統領と信頼関係が構築できているため、なんとかのらりくらりとかわせるかもしれないが、ポスト安倍は踏み絵を突きつけられる。そのとき、どういう判断をするか(安全保障をアメリカに頼っている以上、日本に選択肢はないが)。かつて世界が米ソ両陣営に分かれたように、今後は米中の両陣営に分かれるだろう。「アメリカとも中国ともつきあいたい」という〝いいとこ取り〟は通用しなくなるにちがいない。

 そういうことも含め、日本経済のパイは縮小していかざるをえない。国民の平均所得は減り、失業率が上がる可能性が高い。そのとき、国民の一人ひとりがどのような生き方をするのか、根本的に問われることになる。そこまで先を見据えて自分の軸を定めておかないと、とんだしっぺ返しを食うことになる。

 え? 私ですか? もちろん、こんなことを書いているくらいだから、どういう時代になっても対応できるように心の準備をしている。もちろん、悲観的にではなく肯定的に。

 

 本サイトの髙久の連載記事

◆海の向こうのイケてる言葉(新コラム)

◆ネコが若い女性に禅を指南 「うーにゃん先生の心のマッサージ」

◆「死ぬまでに読むべき300冊の本」

◆「偉大な日本人列伝」

 

髙久の著作(オススメ本)

●『葉っぱは見えるが根っこは見えない』

 

お薦めの記事

●「美しい日本のことば」

 今回は「藤浪」を紹介。小さな紫の花房が風にたなびいている姿が波を思わせたのでしょう。続きは……。

https://www.umashi-bito.or.jp/column/

(200518 第993回)

【記事一覧に戻る】

ADVERTISING

メンターとしての中国古典(電子書籍)

Recommend Contents

このページのトップへ