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不死身の大イチョウ

2019.11.20

 ちょうど1年前、思い立って「日本再見の旅」を始めた。それ以前から、還暦を機に車で日本一周をしようと思っていた。しかし、仕事に影響するのと、いっぺんに日本を一周したとして自己満足に過ぎないのではないかと思い直した。それより、行く時期をずらし、事前に行き先の情報を丹念に集め、自分の基準で日本のいいところを再発見し、文章にしよう、と。

 以来、沖縄、宮崎、山梨、奈良、広島、島根、鳥取、岡山、長野、静岡、福島を訪れた。その多くは本ブログでも紹介している。

 なるほど日本にはまだまだ有形無形の観光資源、文化財があるのだと再認識している。

 ふと、足元を見つめてみようと思った。外へ出向くのもいいが、まずはふだん暮らしている東京の「いいところ」を見直してみよう、と。考えるまでもなく、東京は歴史遺産も新しいものも凝縮している。足元を見つめ直すのも一種の「生活の軽妙化」かもしれない。

 麻布に善福寺という古刹がある。天長元(824)年、空海によって開山された。開山とあるように、この一帯は麻布山とも呼ばれ、高台になっている。鎌倉時代、親鸞の人徳に魅了された住職が浄土真宗に改宗した。

 この寺に「逆さイチョウ」と呼ばれる大イチョウが鎮座している。親鸞が持っていた杖を土に刺したところ、根付いて枝葉を伸ばしたといういわれがある(ほんとうかな?)。それはともかく、樹齢750年、樹高20メートル、幹周り10メートルという巨樹だ。

 戦争当時、このあたりは激しい空襲をうけ、焼夷弾によって焼け果たというが、この巨樹は朽ち果てることなく生き抜き、今に勇姿をさらしている。焼けただれた跡が生々しく残っている。枝から多くの気根が伸び、地面に到達して根付いている様子は、まさに〝垂乳根〟。まるでおばあちゃんのオッパイのようである。

 すごいなあと思う。戦争の生き証人は、われわれ現代人が見ていないものをたくさん見てきた。それだけでもすごい。自ずとこうべが垂れる。

 

本サイトの髙久の連載記事

◆ネコが若い女性に禅を指南 「うーにゃん先生の心のマッサージ」

◆「死ぬまでに読むべき300冊の本」

◆「偉大な日本人列伝」

 

最近の髙久の著作

●『父発、娘行き』

●『葉っぱは見えるが根っこは見えない』

●『結果をだす男 中田宏の思考と行動』

 

●「美し人」最新記事 ガラス作家・植木寛子さん

●「美しい日本のことば」

(191120 第948回)

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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