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遠藤現夢の比類なき功績

2019.09.21

 裏磐梯に広がる数百の湖沼を含む一帯の光景は、私がもっとも惹かれる絶景ポイントのひとつである。

 なかでも五色沼の散策路は格別だ。今までに何度歩いたことだろう。そのたび、自然が織り出す色合いの妙技に見惚れた。

 前々回も書いたが、1888(明治21)年の磐梯山爆発によって火山灰や泥流で堰き止められた川の流れが、あちこちに湖沼をつくった。周囲はずっと荒れ果てたままだったが、荒野を美しい自然の森に戻したいと考えた遠藤現夢という人が私財をなげうち、1340ヘクタールもの広大な土地に植林し、それが成長して現在のような姿になった。五色沼の途中には、そんな遠藤現夢の功績を顕彰する碑や墓もある。彼の名はあまり知られていないが、その功績は無限ともいえるほど大きい。

 散策路は全長3.6キロ。裏磐梯ビジターセンターから歩けば、毘沙門沼、赤沼、みどろ沼、るり沼、青沼、柳沼と続く。もちろん、それ以外にも小さな沼がある。毘沙門沼には多くの鯉が生息していて、人間を見つけるや、近寄ってくる。餌をもらっているのだろう。

 6、7年前に歩いたときよりはるかに整備されていた。それぞれの沼の絶景ポイントに展望台が設けられている。少しアングルを変えただけで、色のグラデーションが変化する。磐梯山など、借景との位置関係も変わる。それを考慮しての展望台だ。地元自治体が遠藤現夢の思いに応えたということだろう。

 なぜ、五色沼の色は千変万化するのか。説明を読むと、硫酸イオンや塩素イオンを多量に含んでいるからとか、湖底の苔に太陽光が当たり反射してコバルトブルーに変わる等など、いろいろな理由があるのだとわかる。青沼の水面近くに垂れた葉っぱは、先端が白くなっているが、水分に含まれたケイ素やアルミニウムによって脱色されているのだという。

 でも、説明は要らない。そういうことは専門家に任せたい。

 私は、ただ目の前に広がる絶妙な配色を楽しむだけでいい。私が絵描きであれば、どのように絵の具を調合すればあのような色合いになるだろうと思案するだろう。そして、ひとまず物書きの端くれである私はどのような言葉にすればあの色合いを表現できるかと思案する。しかし、考えれば考えるほど、観光ガイドにあるような陳腐な言葉しか浮かんでこない。

 五色沼の色は、大自然の「気」や「心」の微妙な移り変わりを表す色なのではないか。ふと、そんな気もする。

 春、夏、秋の五色沼は知っている。冬はどんな光景が広がっているのだろう。福島の冬を1時間以上も歩くのはきついかもしれないが、見てみたい気もする。ふんぎりがつけば、だけど。

 

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●『葉っぱは見えるが根っこは見えない』

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●『結果をだす男 中田宏の思考と行動

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「美し人」公式サイトの「美しい日本のことば」。文化遺産ともいうべき美しい言葉が紹介されています。

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(190921 第933回)

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