多樂スパイス

学びの効能

2010.04.29

 今回も松山でのことを。

 

 坂の上の雲ミュージアムの入口から左に折れ、少し坂を上ると久松定謨の別邸だった萬翠荘があり、そのすぐ上に、愚陀佛庵がある(「愚陀佛」とは夏目漱石の別号)。

 明治28年、夏目漱石と正岡子規が50余日をともに暮らした家屋である。

 NHKのドラマ『坂の上の雲』にも描かれていたが、日本新聞の記者となった子規は、日清戦争に従軍したが、患っていた結核が悪化し、帰国の途で喀血した。その後、療養のために故郷に戻り、漱石のすすめでこの家に身を寄せた。当時、一階は子規、二階は漱石が使っていたらしい。

 こういう歴史的遺産は、物語の背景を知らないと、“なーんだ、ただの破れ家屋か”ということになるが、知っていると、俄然輝きを増す。“そうか、ここに子規が住んで、結核に怯えながら新しい俳句の世界を切り拓いたのか”とか、“漱石は階下の子規を慮りながら何を執筆していたのだろう”などと思いは自在に駆けめぐる。

 要するに、何を見るにも「学び」は感動を倍加させるということだ。

 先入観なく、素の状態で物事をみることがいい場合もあるが、多くの場合は勉強がものをいう。そういうことを歴史的遺産は教えてくれる。

 思えば、明治のその頃、軍人も文人も命懸けで生きていた。だから、有色人種で唯一、西洋列強の植民地にならずにすんだのだ。

 そのことをもう一度、私たち日本人は思い出すべきではないだろうか。

(100429 第164 写真は愚陀佛庵)

 

 

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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