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紺碧の将

谷川岳とかき氷

2018.09.12

 聞くところによると、日本で最も死者の多い山は谷川岳らしい。群馬県と新潟県と福島県の県境にある急峻な山で、標高は1977メートル。なぜそれほど死ぬのかといえば、一ノ倉沢から登るルートはロッククライマー憧れの難所で、そこに猛者どもが挑み、落ちているというのだ。

 もちろん、私はそんな無謀なことはしない。万が一のことがあっては周りが大混乱になる。よって、土合からロープウェイに乗って天神平まで行き、そこから谷川岳を目指すというルートを選んだ(当たり前か)。

 先月の西穂高岳の時もそうだったが、私が登ろうとすると、台風の奴がやってくる。しかし、それてくれと念力を送ると、台風の奴は進路をそらしたり、速度を変える。かくして絶好の登山日和になるという寸法だ。

 谷川岳にはふたつのピークがある。ひとつ目はトマの耳、次がオキの耳と呼ばれる。どうやら「トマ」はとば口を意味し、「オキ」は奥を意味するらしい。

 頂上からの眺めが素晴らしい。毎回思うが、適格な言葉をあてがうことができない。360度、どこを見渡しても山、山、山。遠くの山は霞み、近くの山は明瞭に見える。途中は微妙なグラデーション。空に目を転じれば、青字に白い雲が浮かんでいる。形を変え、色を変え、速度を変え、流れていく。行雲流水のごとく。そこに身を置くと、心の底から幸せだなと思う。

 往復5時間弱のコースは、きつ過ぎず、楽過ぎない。晴れていたためか、天神平に着いた時は体がカラカラに乾いていた。早くソフトクリームを食べたいという一心で下りてきた。疲れ切った体は甘さも求めている。

 天神平の売店にかき氷を発見した時の感動をなんと言えばいいのだろいう。まさに「!!!!の!」であった。

 私は迷った末、メロンを注文した。300円である。いつもなら見向きもしない人工的な甘さである。子供が好む味である。

 ところが、その時の感動といったら! ひと口ごとに体が喜びの雄叫びをあげるのがわかった。

 やはり、「空腹は最良の調味料」なのである。あの時は体が水分と甘みと冷たさを求めていた。それに適ったものだったからそう感じたのだ。

 これだから登山はやめられない。

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」連載中。 第27話は「こんな広い世の中に、自分は一人しかいない」。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(180912 第841回 写真上はオキの耳にて。下はオキの耳からの眺め)

 

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