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紺碧の将

酷暑と『Japanist』38号

2018.07.24

 ついに暑さの記録を更新。41.1度というのだから、もはやサウナのよう。ただ、暑い暑いと言っていても気温が下がるわけではないから、気を取り直そう。

 

 ともかく、『Japanist』38号が仕上がった。今回の巻頭対談は4回前の本欄で紹介したように、三味線方、一中節の12代目宗家、都一中さんに登場いただいた。

 都一中氏はある時、宗家を継ぐよう言われた。できるかどうか迷っている時、「家元は一番至らなくていい。家元より優れた人がたくさんいてはじめて流儀が盛んになるのであって、家元というのは何よりも一中節のことを愛し、何か問題があったときに謝ればいい」と言われたという。

 そんな一中氏が語る三味線や浄瑠璃の世界。日本文化の特長、ご自身の稀有な体験など、幅広いリベラルアーツと軽妙な話術で盛りだくさんの内容を語ってくれた。魅力満載の対談である。

「ジャパニストの美術散歩」は日本画家・石村雅幸氏を紹介。こちらも以前の本欄で紹介している。

石村氏は35歳の頃から巨樹ばかりを描いている。現場に足を運び、2週間も3週間もスケッチをする。雨の日は大きなパラソルをさして樹に向かう。ある時は、がけ崩れがあって9人が亡くなった場所までよじ登り、崖を背にして何日も描き続けたという。ずっと上を見ているせいか、スケッチ中に倒れて救急車で運ばれたこともある。日が暮れるまで描き、車の中で眠る。そういうことを繰り返し、仕上がった作品は、どれも生命感に満ち溢れている。

「樹の生命感を出したい。生きているものは、ねじれ、ゆらぎ、形が揃っていない」

「時間をかけて描くから、一瞬のきらめきは描けない。しかし、時間をかけるからこそ描けるものがある」

 石村氏の絵には、日本画独特の間がないことに気づく。あれもこれも描きたくなるのだろう。大きな画面いっぱいに樹が存在を主張している。

「転換期のキーパーソン」は元パティシエ、〈オ・グルニエ・ドール〉店主の西原金蔵氏。こちらも以前の本欄で紹介している。

 西原氏は48歳の時に立ち上げた京都の超人気店を、かねて予告していた通り、今年5月31日、65歳の誕生日をもって閉店した。

 無謀とも潔いとも言われる今回の大英断は、人生100年時代のひとつのお手本になるのではないかと思っている。

 ほかにも渾身の記事を掲載している。終刊まであと2回。〈オ・グルニエ・ドール〉のように有終の美を飾れるよう、全力を尽くします。

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。今回は「人を成長させる原動力」。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(180724 第829回)

 

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