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美し人
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ネイチャーアクアリウムと人間の愚かさ

2018.01.21

 前回に続き、天野尚氏のネイチャーアクアリウムについて。

 風景写真家の天野氏は、水景クリエイターとしても世界クラスである。ネイチャーアクアリウムという言葉は聞き慣れないかもしれないが、簡単にいえば、巨大な水槽の中に自然の生態系を再現することである。当然ながら、水草を用いることから「水草アート」とも呼ばれる。

 毎年、世界規模のコンテストが開かれている。ちなみに、昨年の上位入賞作品は、以下のサイトに掲載されている。

http://www.adana.co.jp/jp/contents/iaplc/2017/index.html

 

 これらはみな、水槽の中に創造された世界だ。昨年は日本の作品が入賞しなかったが、日本はこれまでに何度も1位を獲得している。ネイチャーアクアリウムの分野で、日本は世界のトップクラスと言っていいだろう。

 私はかなりの美術ファンを自認するが、正直、せっかく美術展会場に足を運んでも途中でつらくなることがある。ほとんどの場合、美術は人間が創ったものだ。感性が合わなかったら、ただの退屈なシロモノになってしまう。

 しかし、ネイチャーアクアリウムはちがう。自然と人の合作なのだ。自然の造形だけではこうはならないが、人間の創造性を加えることによって新たな世界が生まれる。私はそういうものに惹かれるようだ。

 美しくなければ作品にならない。しかし、美しいだけでは足りない。水槽の中に生態系が確保されていることが必須条件なのだ。

 会場でもらった小冊子の中に、「COは本当に悪者なの?」という言葉があった。いま、地球温暖化現象の元凶として二酸化炭素は悪者扱いされているが、そもそも二酸化炭素がなければ地球は成り立たない。ネイチャーアクアリウムでも、まず水草に二酸化炭素を与える。すると、光合成によって水草は真珠のような酸素の気泡を出す。それを魚が取り込み、二酸化炭素を吐き出す。このような循環が半永久的に繰り返されているのだ。

 はたと思った。塩分や糖分と同じだ、と。いま、生きるために必要不可欠な塩分や糖分が悪者にされている。塩に含まれるバランスのいいミネラルは命の源だし、われわれの細胞のひとつひとつが機能するためには糖分が絶対に必要だ。しかし、どちらも悪者になっている。人間の知恵など、しょせんそんなものなのだ。なぜ、塩や糖分が悪いものになってしまったかといえば、人間が効率だけを求め、工業製品のような塩や糖に置き換えてしまったからにほかならない。それで病気になっているのだから、愚の骨頂と言う以外ない。

 それと同じように、地球の大気中に二酸化炭素が増えてしまったのは、人間が植物を伐採し過ぎてしまったためだ。木を見て森を見ずとは、まさしくこのことだ。

 人間は、賢いようであるが、じつはとんでもなく愚かな生き物でもある。そういう認識をしない人は、ますます傲慢になっていくだろう。

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(180121 第783回 写真は当日展示された天野尚氏のネイチャーアクアリウム)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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