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紺碧の将

初着物

2009.01.11

 自分のブログに自分の姿を出すのは私の本意ではないが、前回の文章を読んだ読者から「ぜひ高久さんの着物姿を見せてほしい」というリクエストがあったので、恥をしのんで掲載することにする。

 右の写真がそれ。この着物を購入した「衣裳らくや」で着付けを教えてもらい、ひと通りマスターした後、先生に撮してもらった。ちなみに着物はグレー地に細かい白が混じった紬、羽織は濃茶色で裏地が前回紹介したように鳥獣戯画。帯は茶と濃紺の細かいストライプ。

 スーツを選ぶ際、私は絶対に茶系統は避ける。似合わないと思っているからだ。しかし、石田節子さん(着物スタイリスト。次号の『fooga』でご紹介)にみつくろってもらった何枚かの羽織の内、これは! と思ったのは意外にも写真のそれだった。洋装では好きではなかった色を選ぶ、こういうところも洋装と和装のちがいかもしれない。

 着付けを学んでいて合点がいったのは、さまざまな着崩れを直す時の仕草が男の艶気につながり、粋でもあるということ。たしかにそうだと思った。そういうことをさらりとこなせるようになった時、ちょっとそれまでとは違った自分になっているような気がする。

 着崩れはその人の癖の結果でもある。ということは、その人の歴史を映し出す映写機のひとつとも言うことができよう。それを否定することなく、それをそのままその人の魅力と転化する考え方が素敵だと思う。

 それから、よく言われるように、やはり着物を着ると気持ちがシャキッとしてくる。紐帯という人間の中心が引き締まっているのだから当然かもしれないが、洋装のベルトとはひと味ちがう。

 というわけで、執筆やミーティングなど、あまり動きを要しない仕事の時は積極的に着物を着ようと思う。『Japanist』というたいそうな名前の雑誌を発行するからには、まず自分が『Japanist』にならなければ。そして、この素晴らしい日本の文化を、まずは身近な人たちに知ってもらう。現に私が「衣裳らくや」に顔を出すようになってから、数人がそこで購入してくれた。

 ちなみに私は「衣裳らくや」の営業マンではないが、着物を買うならここはお奨めだ。

「銀座の着物専門店で、しかもオーナーが吉永小百合や樹木希林、市川海老蔵、渡辺満里奈などのスタイリストも手がけている」と聞いたら、軽く一揃い数百万円は越えてしまうだろうと怖じ気づくはずだが、意外にもそんなことはない。「いいものを、良心的な価格」で提供している。石田さんはもっと着物を普及させたいと考えているのだが、その気持ちが店の運営に現れている。こういう方が日本のあちこちにいたら、もっと着物は普及するのに、と思ったのだった。

(090111 第83回)

 

 

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