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紺碧の将

破壊と創造

2017.02.10

 「先人たちの軌跡=歴史」とどう向き合うか。

 いつの時代も「現代人」に問われる、究極の問いである。
 ヨーロッパ人は概して歴史を大切にする民だと思うが、そのアプローチはさまざまだ。とりわけ、フランス人はアヴァンギャルドである。
 その典型的な例が、ルーブル美術館のメインエントランスにあるガラスのピラミッドであろう。1989年に完成した建造物で、当時のミッテラン政権が推進した「パリ大改造計画」の一環として建設された。
 私も何度も見たが、周囲の光景との異様な調和に度肝を抜かれる。何度見ても、驚かないということがない。なにしろ、周囲は絢爛な古典的建築・ルーブル宮である。そこにまったく異質のガラスを使って、もともとフランスのものではないピラミッドを模したエントランスを造ってしまったのだ。異様にもほどがある。当然のことながら、この計画は賛否両論を呼んだ。
 建築家は中国系のイオ・ミン・ペイ。信楽にあるMIHO MUSEUMも彼の手によるものだ。
 パリの旧市街地(20区内)には基本的に新しい建築物を造ることはできない(もちろん、例外はあるが)。かの熱波によって数千人が死んだ後も、エアコンの室外機を路面に向けて取り付けられないという法律を変えず、地方都市へ伸びる拠点ターミナル同士をつなぐこともしないというほど歴史的景観を大切にしている。それらを聞くと、フランス人ってやつはまったくガチガチの守旧タイプなのかと思わせられるが、やる時はやる連中なのだ。この、変化を恐れない、破壊的創造が彼らの真価だ。特に知的好奇心の高い人たちは、「それまでにない、新しい文化」を積極的に受け入れる。しかし、受け入れないものもある。美しくないものだ。
 今となってはパリの風景にすんなり溶け込んでいるエッフェル塔だが、あれも建設当時は賛否両論を集めた。モーパッサンなどは、エッフェル塔を見なくても済むようにと毎日エッフェル塔に昇って食事をしたという。ほんとうにイヤだったのか、あるいはそれが裏返って好きになったのかわからないが。

 海外には久しく脚を運んでいないが、今でも行ってみたいところは、パリとバリ島である。
(170210 第699回 写真上は私が撮影したピラミッド、下はWikipedia掲載のピラミッド)

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