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ココロバエ
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あまり教えたくない宿

2016.10.09

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 今回は、鶴岡方面に来た時に利用する宿のことだ。
 じつに素晴らしい宿がある。歴史の趣きがあって、知的で静謐で心地よい。食事も旨いし、2つある温泉もいい。そして、なによりコストパフォーマンスがいい。団体やグループ客には使ってほしくないので、本音を言えばあまり知られないでほしい。でも、経営が成り立たないと継続できないだろうから、そこそこは知ってほしい。そんな宿である。
 「湯どの庵」という。なにがいいって、中庭とそれに面した設いがいい。中庭はモミジを主役にし、さまざまな高低差をつけているが、中でも目を見張ったのが雑草の生かし方だ。どこまで意図的にやっているかわからないが、雑草は伸ばし放題だと汚くなるものの、ほどほどに残すといい味わいになる。雑草と見ればなんでもかんでも引き抜いてしまうような人に、その微妙なセンスはわかるまい。そもそも昭和天皇が言われたように、雑草という名の草はないのだから。
 石と苔と雑草。それらをうまく組み合わせた妙味のある中庭に向かって、いくつもの椅子が並べられている。
%e6%b9%af%e3%81%a8%e3%82%99%e3%81%ae%e5%ba%b5%e3%81%ae%e6%a4%85%e5%ad%90 この宿のアクセントのひとつは椅子であろう。ゆったり座れるソファから木工の椅子まで、いくつもの椅子が中庭を向いている。しかも、本が適所に置かれている。ただ、本をそこに置くだけで、いい空気をつくるということをこのオーナーはご存知らしい。
 さらに、ゲストとの間合いがいい。適度に放っておいてくれるのだ。銘々がコーヒーを注ぎ、庭を眺めながらのんびり過ごすことができる。
 鶴岡と言えば、食の都・庄内だ。みずみずしい山の幸と多彩な海の幸をていねいに調理した夕食のコースは、さりげないが満足感はきわめて高い。朝食の和膳も素晴らしい。どこへ行っても朝食はビュッフェが多いが、きちんと膳で運ばれてくるだけで一日の始まりが違ってくる。
 このブログで紹介したことのあるスポット、例えば月山や鳥海山などの登山コース、羽黒山五重塔や湯殿山神社、加茂水族館、アルケッチャーノ、隣町の山居倉庫やあがりこ大王などの他、藤沢周平記念館など、いずれもこの宿を拠点として行ける範囲にある。
 いつの日か、一ヶ月くらいここに逗留して、原稿を書いたり本を読んだりしたいなあと密かに思っている。箱根なら間違いなく1泊5万円はするはずだが、ここはじつに良心的なプライス設定なので、そういうことも可能だ。
 以前、スモールラグジュアリーを謳う伊豆の宿のメインダイニングでのこと。いろいろうるさいことを言うわりに、中国人の団体客がどんなに騒ごうと、まったく野放しにしていた。たしかにグループ客はいっときの経営を助けてくれるが、長い目で見たら、明らかにマイナスだ。ちなみに、私は今後、その宿に行くつもりはない。
 旅館やホテルに限らず、経営はY字路の連続である。
湯どの庵 http://www.kameya-net.com/yudono/
(161009 第670回 写真上は「湯どの庵」の中庭。下は本のある椅子の風景)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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