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ココロバエ
美し人

願望を極めるとマーケティングを凌駕する

2011.10.07

 世の中には面白い人がいるものだ。

 『Japanist』でパートナーシップを組んでいる神楽サロンの奥山秀朗氏に紹介され、菅野敬一さんという方に会った。もともと航空機の部品メーカーの社長兼職人だが、経営難をきっかけに思いっきり開き直り、「自分が欲しいと思うものだけを作る!」という超ゼイタクなコンセプトのもと、バッグやケースやアクセサリーなどをデザインし、製造した。やがて多くの熱狂的なファンを獲得し、今では「エアロコンセプト」という立派なブランドになってしまったのだ。ウエストミンスターはじめ、海外の御歴々が目を付けたというころが面白い。

http://www.aeroconcept.co.jp/products/index.html

 私もバッグをひとつ購入した。モノや衣服はここ数年、ほとんど買っていなかったが、久しぶりに “消費” の快感を味わった。右上の写真がそれだが、かなりアクの強いデザインである。エアロコンセプトはポルシェ社とのコラボレーションも何度か行っているが、いかにもポルシェに通ずるマニッシュなデザインである。航空機メーカーだけあって、ジュラルミンを使用し、そこに大小の穴が空いている。表面はライカ風の手触り。小さなドットがエンボス加工され、整然と並んでいる。この表面に皮を張り付けたものもあれば、ジュラルミンが剥き出しのものもある。

 最大の特徴は、機能性を無視していることだ。私はそういう開き直りに弱い。このバッグも内側の厚みは3センチほどしかなく、内ポケットもない。「もっと厚みをつけてくれないか」というオーダーに対して、菅野さんは、ただひとこと、「無粋だ」で済ませてしまうという。そう、この職人兼社長は「カッコイイ」ことをなによりも優先しているのだ。それが多くのファンを獲得しているというのだから、世の中面白い。

 そういえば、私が乗っているクルマもまったく非合理的だ。このご時世に2人乗り・マニュアルシフト・左ハンドル・積載量はごくわずか。はっきりいって、 “使えないクルマ” である。スタイルの良さと屋根が開くことだけが取り柄の絶滅危惧種である。さらに、乗っている人間も絶滅危惧種である。

 思えば、私は非合理的なものが好きらしい。だから、菅野氏とはすぐに意気投合してしまった。ランチだけの予定が、気がついたら夕方になっていた。

 ところで、前回、西原金蔵氏のオーディオマニアぶりを書いたが、菅野氏もハンパじゃない。フランスの三つ星レストランを荒らし回り、極上のワインはあらかた飲んでしまったという。ごていねいにロマネ・コンティやロートシルトなどの名品を年代別に表にし、20点満点で採点までしている。ときにはブドウ畑まで行って、品質を確かめることもあったという。渓流釣りにも熱中し、二代目「渓水緑渓齋」を襲名している。他にもカメラ、料理……と興味の対象は尽きない。

 やはり、菅野さんもY染色体の遺伝子上の欠陥をがむしゃらに補おうとしているのだろうか。

 だから、今回も結論は、「男っていじらしい」である。

(111007 第286回 写真はエアロコンセプトのバッグ)

 

 

 

 

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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