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紺碧の将

コンパクトシティ富山

2021.08.23

 38年ぶりに金沢・富山へ行った。

 思えば、そのあたりは私にとってエアポケットみたいだった。どうしてそれだけ長い間、行く機会がなかったのだろう。

 今回は富山市のコンパクトシティ政策について。

『Japanist』で森雅志富山市長(当時)を取材したことがある。政治家は何人も取材しているが、きわめて印象に残っている人の一人だ。なんといっても政策が明快だし、持論を過不足なく述べる能力がある。

 森氏は中学3年生のとき、これからは朝日新聞を読まないと決意したというほど、現実認識を欠いた机上の空論をふりかざす左翼思想の危うさを見通していたうえ、政治家になっても「政治の本質はリアリズムにある」と言い切っている。そんな森氏が主張するコンパクトシティ政策は、うなづくところが多かった。

 コンパクトシティとは、次のようにいえる。

●今後人口減少が進むなか、すべての地域の均衡ある発展は不可能

●自動車に依存しない、コンパクトな街づくりを目指す。そのため、郊外へ分散していた住民を中心部へと移動を促す

 藤吉雅春氏著『福井モデル』によれば、2012年、OECDがまとめた「コンパクトシティ政策報告書」で、富山市は、パリ、メルボルン、バンクーバー、ポートランドと並んで、世界の先進5都市として評価されている。

 それまで富山市は道路整備率と道路改良率が全国1位。1世帯あたりの乗用車保有台数が全国2位と、クルマ社会を前提とした政策を進めてきた。しかし、それによって行政コストが増大し、車を運転しない高齢者にとっては住みにくい街となってしまった。他の地方都市と同様、中心部の商店街は空き店舗が目立ち、地価が下落、税収が落ちた。税収の約74%が中心区域からの都市計画税や固定資産税であることからもわかるように、中心部の衰退は悪循環のもととなる。

 そこで森氏は思い切って中心部に税を投入することを決意する。中心部を循環するライトレール(路面電車)を敷設し、そのエリア近辺に公共施設や学校や病院、スーパーなど生活に必要な施設を誘導するというもの。さらに、ライトレールは港など重要な拠点を往復するいくつかの路線を組み合わせ、機能性を高めた。これが「お団子と串の都市構造」である。実際、私も新幹線で富山駅に降り、そこでトラムに乗り換え、中心部にあるホテルへ行き、翌日は岩瀬という歴史地区をライトレールで往復した。

 三位一体の改革により、地方の自助努力が求められている。森氏のような独特の構想力に加え、優秀な企業や個人を誘致する能力が物を言うようになるだろう。

 

富山駅でライトレールに乗り換え

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

富山市はガラスアートも推進している。ガラス美術館は斬新な建築

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

常設展示場にはアヴァンギャルドな作品が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうど「富山ガラス大賞展2021」(富山市主催)の入選作品展が開催されていた。世界中から集ってきた作品に魅了された。下は発泡スチロールのようだが、ガラスで作られている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラスで布を表現

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

富山城の夜景

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩瀬地区にある北陸銀行。佇まいがいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(210823 第1090回)

 

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