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紺碧の将

72の気候を感じる

file.128『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』白井明大+有賀一広 東邦出版

 

 季節といえば、1年を4等分した春夏秋冬が一般的だが、日本には1年を24等分した二十四節気(にじゅうしせっき)と、72等分した七十二候(しちじゅうにこう)がある。

 二十四節気と七十二候は旧暦をもとにしている。旧暦とは、太陽暦(地球が太陽のまわりを1周する時間の長さを1年とする)と太陰暦(月が新月から次の新月になるまでを1ヶ月とする)を組み合わせた太陰太陽暦をいい、明治5年に改暦され、太陽暦が採用されるまで、日本人の暮らしと調和していた。

 二十四節気は、春で言えば「立春」「雨水」「啓蟄」「春分」「清明」「穀雨」といったように、春夏秋冬それぞれが6つに分かれている(4×6=24)。七十二候は、二十四節気のなかにそれぞれ初候、次候、末候がある(24×3=72)。

 当然のことだが、季節は春からいきなり夏になるわけではない。三寒四温と言われるように、寒暖を繰り返しながら微妙な変化を続け、次の季節に移ろう。その〝微妙な〟変化を見極めるには1年を72に分ける必要があった。農林漁業、とりわけ田植えや稲刈りの時期など農作業の目安になる農事歴でもあり、桃の節句や端午の節句などの五節句、節分、彼岸など雑節(ざっせつ)と呼ばれる季節の節目など、年中行事としてなじみ深くいまでも暮らしに溶け込んでいるものが多い。

 本書は、2012年に出版され、ベストセラーとなったが、新たに文章や絵を加えた増補新装版が2020年に出版された(上の写真は、2012年版)。

 七十二候の名前がユニークだ。例えば、立春の初候は「東風解凍(とうふうこおりをとく)」というように、季節それぞれの情景をそのまま名前にしている。

 本書を開くと、「暖かい春風が吹いて、川や湖の氷が溶け出すころ。旧暦の七十二候では、この季節から新年が始まる。新暦では、およそ2月4〜8日ごろ」とある。七十二候のこの部分を読むだけで、季節の移り変わりがわかる。さらには、旬の魚や野菜、果物、その時季ならではの暮らしの楽しみや行事のことが、素朴で味わいのある挿絵、文章や季節にちなんだ詩歌とともに記されている。

 本書を読むと、あらためて、自然の運行の緻密さに驚かざるを得ない。と同時に、これほどデリケートな季節の変化がある国に生まれた幸せを思う。

 筆者はマンション暮らしだが、72種類の変化を感じたいと思っている。

 

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