庭師は植物を育てない。庭師の仕事は、花が開く条件を整えることだけだ。
自然界のありようは実に不思議だ。空、海、風、雨、雪、さまざまな鳥獣や昆虫、そして誰に教わったわけでもないのに種から芽を出し花を咲かせる植物など、どれもこれも、ひとつとしてまったく同じ姿をしているものはなく、それぞれが美しい。太陽や月でさえ、眺める心持ちひとつで全然違って見えるのは、人間も自然の一部だからだろう。こんな微妙な情感も今後AIはわかるようになるのだろうか。
ところが、これほど調和のとれた自然界にいながら、われわれ人間は不平不満いっぱいで、なにかにつけて調和を乱す。
なぜそうなってしまったのか。大きな要因の一つは学校教育にあると、イギリスの教育者ケン・ロビンソンは言う。創造力の塊である子供時代に適切な教育を受けていれば、みんな独自の才能が開花するのに、学校が子供の創造性を殺していると。
適切な教育とはなにか。自然界にヒントがある。
「庭師は植物を育てない。庭師の仕事は、花が開く条件を整えることだけだ」
人間も同じ。教師や大人が余計なことをしなくても、環境を整えさえすれば、子供は勝手に育つ。生き生きと、のびのびと、自由自在に。
子供だけではない、大人だってそうだ。眠っている能力をうまく引き出したいと思うなら、いいものに触れ、自ら学び、生活環境を整え、思考や行動を整え、自分自身を整えていけば、生きることが楽しくなり、独創的で豊かな人生が送れるはずだ。そうすれば、自然界のように無意味な争いもなくなり(生きるために必要最小限の弱肉強食はあるが)、違いを前提とした調和が訪れるのではないだろうか。
(260817 第902回)
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