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祝 平泉の世界文化遺産登録

2011.07.09

 平泉と小笠原諸島が世界遺産に登録された。震災以降、あまりいい話題がなかっただけに、まずは素直に祝福したい。

 平泉といえば、藤原一族。子どもの頃、源義経が藤原秀衡を頼って行く様子を思い浮かべてはハラハラドキドキした。弁慶の勧進帳のくだりなどは、さながら自分があの場で文字の書かれていない勧進帳を読み上げているような気になったものである。当時は、頼朝が悪で義経が善だと思っていた。三成が善で家康が悪だとも思っていた。今は全然そうは思わないけど。

 それでも平泉はいつかは訪れるべきだと思っていた。そして、数年前、願いが叶ったのだが、なるほど平泉は素晴らしいところだった。藤原3代の首級が納められている金色堂をはじめ、みどころがたくさんあるし、ちょうど紅葉の時期に訪れたこともあって、周囲の自然は見事な色合いで調和が保たれていた。

 そして、今回、被災地を巡った後、陸前高田から平泉に進路をとり、再び訪れたのであった。

 平日のためか、あるいは震災の影響のためか、人はあまりいなかったが、そのためか、歩くときの土を踏みしめる音が耳に心地よく、鳥の鳴き声も澄んでいた。

 中尊寺に伝わる文化財・宝物を永く後世に伝える宝物館として建設された讃衡蔵には、実際に生首が納められていた首桶があった。そう思って見るせいか、首桶の周りに異様な妖気が流れていると感じた。あるいは気のせいだったかもしれない。一瞬ぞーっとし、鳥肌がたったのだった。現代に生まれて良かったと思った。私が当時の日本に生まれていたら、そういう首桶のお世話になっていたことだろう。おそらく無理な戦いを挑み、あっけなく首を討ち取られ、骸(むくろ)は野ざらしになっていたことだろう。

 と考えて、はたと迷う。自分の首が首桶に納められるということは、かなり身分の高い武士に他ならない。私がそのような地位につくはずもなく、やはりそれは白昼夢だったことに気づいた。

 いずれにしても、東北から文化遺産が選ばれたことはなによりの朗報である。それがきっかけになって、多くの観光客が東北に戻ることを願ってやまない。

 山を下りるとき、被災地の方々の艱難辛苦が少しでも和らぐよう、祈るばかりだった。

(110709 第264回 写真は中尊寺金色堂)

 

 

 

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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