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釜爺がいた場所

2011.05.27

 映画といえば『ゴッドファーザー』がいちばん好きという私にはまったく似合わないかもしれないが、私は宮崎駿作品をことのほか気に入っている。というか、日本の文化遺産だとさえ思っている。黒澤作品もそうだが、そういう人の作品には敬意を表し、必ずDVDで所有することにしている。

 宮崎作品で最も好きなのは『もののけ姫』と『千と千尋の神隠し』だ。いずれも日本人の自然観、カミ概念、八百万の神への畏敬など、われわれのDNAの奥底にしっかりと流れている感性に訴えるよう、真っ向から挑んだ作品である。

 東日本大震災の後の復興プランのメンバーは、まず『もののけ姫』を観てから会議に臨むということにすれば、まったく違った方向へ進むのではないか。もちろん、間違った方向へ進むと言っているのではない。むしろ、日本人があるべき姿を取り戻すための復興プランに少しでも近づくのではないかと思っている。

 さて、小金井市にある江戸東京たてもの園の中に、宮崎駿がヒントにした建物がいくつもある。そのひとつが、右上の写真の文房具店。壁にぎっしりと詰まった引き出しを見てほしい。釜爺が座っていた場所の背景がこんな風だったでしょう? 長い手を伸ばし、引き出しの中から必要な物を取りだしていた。

 宮崎駿はこの文房具店を見て、大いに感性を刺激されたのだろう。あのひとコマはじつに印象的だった。人間社会とつながる「神域」の一部という感じが漂っていた。

 ところで、江戸東京たてもの園には高橋是清邸などかつての偉人が住んだ家屋や、古い居酒屋、銭湯、仕立て屋など、江戸時代から残っている貴重な建物が移築されている。昔の日本人の心に思いを馳せることのできる、素敵な場所である。

(110527 第254回 写真は江戸東京たてもの園内にある武居三省堂の室内)

 

 

 

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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