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紺碧の将

今がいちばん

2020.04.20

 かれこれ10年以上、小田急線の祖師ヶ谷大蔵駅を利用している(月に1回ていどだが)。師事している田口佳史先生の講義を聞くためだ。午前中、講義を聞いて近くでお昼を食べ、〝彼女〟に会いたくなると駅の西側にまわる。〝彼女〟とは駅前広場にある大きな桐の木。

 ところが、久しぶりに会いに行って愕然とした。伐採されていたのだ。

「またか」と思った。最近、あちこちでりっぱな樹が伐られているのを目にする。そのたび、痛ましい思いをする。

 桐の木があったところに案内板があった。「桐の木は老朽化により倒木のおそれがあるため、令和2年1月末に伐木しました。」とある。続いて、令和3年度の駅前広場整備の際には新たな桐の木の苗木を植樹すると書かれている。

 そういう理由なら仕方ないなとあきらめがついた。

 ふとウルトラマンの像が目についた。それまでは桐の木に意識がいっており、ほとんど私の視界に入っていなかったのだが、主役が消えたことによってかなり目立っている。

 少年時代を思い出した。私は怪獣ものが大好きで、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」を欠かさず見ていた。小学1年か2年の頃、かなり詳細な怪獣図鑑も作った。怪獣のスケッチの余白に怪獣の名前、出身星、全長、体重、得意技などを記した。自慢の図鑑だった。その後、「仮面ライダー」も欠かさず見たが、ローソクの火が消えるように興味を失っていった。

 そんな子供時代を思い出したのだ。

 だからといって、なんてことはない。私は昔を思い出して「あの頃は良かったなあ」と思うことがまったくない。皆無である。なぜなら、今の方が断然愉しいから。10代にも20代にも戻りたくない。

 今がいちばんいいと思えるって、案外幸せ者なのかも。

 

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(200420 第986回)

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