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紺碧の将

私が惚れ込んだ日本酒

2019.12.26

 1年中、酒をまったく飲まない日はない。以前は休肝日を設けていたが、「食べない健康法」で知られる石原結實氏から、酒が好きなら適量を毎晩飲んでも問題なしとお墨付きをもらい、以来7年くらい毎晩飲んでいる。私にとっての適量とは、ビール(350mm)と日本酒1.5合、ウイスキー少々。

 まずは缶ビールから入る。銘柄はキリンの一番搾り。麦芽とホップだけで作っている国産ビールは案外少なく、一番搾りとエビスとプレミアムモルツのみ。ほかは飲まないということではないが、自宅で買い置きしているのはすべて一番搾り。

 次にメイン。夏だけはウイスキーのソーダ割りを飲むが、それ以外は日本酒で、銘柄はほぼ決まっている。『Japaniat』で「旨い純米酒を求めて」というコラムを30回掲載したが、そのときの取材によって日本酒の本質を学ぶことができた。と同時に、自分の好みの銘柄を見つける手立てともなった。選ぶ基準は、純米・辛口・熱燗に耐えられる熟成の3点である。その結果、「丹沢山」(神奈川)、「大七」(福島)、「黒牛」(和歌山)が贔屓の御三家となった。冷で飲むには、「澤屋まつもと」(京都)もいい。

 そして、就寝の約1時間前、1枚のCDを選び、リキュールグラスで1、2杯、ウイスキーを飲みながらじっくりと音楽を聴く。

 

 ここでは御三家のなかでも特に贔屓にしている「丹沢山」を製造する川西屋酒造を紹介したい。「全量純米蔵を目指す会」の会員であり、すべての商品を純米酒にした、筋金入りの本物追求酒蔵。代表を務めるのは露木雅一さんだ。

 露木さんによれば、本来日本酒は純米酒で、室町時代までは高貴な位の人たちだけが純米酒を燗して飲んでいたが、江戸の町民文化が花開き、一般の庶民も純米酒を燗して飲む文化が普及したとのこと。

「それが日本酒の幹です。吟醸か大吟醸かと話題になることが多いですが、コメをどれくらい削るかという論議は枝葉の部分です。やはり、日本酒の幹にあたる部分をしっかり受け継いでこそ、本物と言えるのではないでしょうか」

 なるほど、本質にのっとるということ。まさに高久好みだ。

 では、燗にするということはどういうことなのか。

「湧き水のような、飲むとスーッと体に溶け込んで、さらにのど越しがきれていくような水とでも言いますか。お燗した酒は、口にふくんだとたん、ほんのりと味や香りが広がり、飲み込んだあと、あとが引かず、肝臓への負担も少ないんです」

 なるほど。しかし、なんでもかんでも燗にすればいいのかといえば、さにあらず。

「お燗によって、その良さが引き立つようにするには熟成が必要です。ホット酒とお燗は根本的に違います。いまは、ほとんどの日本酒が、お燗をするとホット酒になってしまいます。熟成させていないからです。私どもは最低でも1年から2年、酒を寝かせて熟成させます」

 すぐに出荷すれば、その分、早く売上を回収できる。そうせずに熟成させれば、光熱費や倉庫代を含め膨大なコストがかかる。それがわかっていて、合理性をとらない。

 カッコイイな、そのやり方。並みの経営コンサルタントなら真っ先に反対するような経営スタイルだ。

 日本酒を取り巻く現状を改めるべく、啓蒙活動にも力を入れている。

「酒屋さんや料飲店の方々をお招きして、ここで試飲していただいています。年間1000名以上の方がここで試飲されています。料飲店の方には、ご自分のお店の料理を持って来てくださいと言います。自分が作った料理と日本酒はどういう風に合うのか、実際に飲んでいただいて知る以外ありません。温度も5度刻みで試飲していただくのですが、その味の違いに皆さん、驚かれます」

 さらに、この酒蔵が特異なのは、自社で直接販売をしないということ。酒販店で購入してもらうというルートを確立し、酒販店を応援するという意味もある。ただし、自社の商品を売ってくれればどこでもいいかといえば、さにあらず。本来の日本酒のあり方を知って、いいものを普及させていこうという意気込みのある酒販店だけを選別するため、面接して決めるというのだ。

 シビレる。まさしく本質にのっとった、王道を行くビジネススタイルである。

 ちなみに、私はネットの「蔵元特約店 吉祥」で注文している。

https://jizake-ya.shop-pro.jp/

 

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(191226 第957回)

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