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紺碧の将

太古から続く、地形の物語

2018.12.02

 沖縄本島の北の端、辺戸岬にほど近いところに大石林山(だいせきりんざん)がある。約2億5千年前の古生代に海中でできた石灰岩が地殻変動によって地上に隆起し、その後、数万年の間に風雨やバクテリアなどによる溶食・浸食作用を受け、カルスト地形ができたという。その森のなかを歩いた。

 1時間強の間、感嘆の声が何度も口をついた。自然が作った造詣の妙に見惚れるばかりだった。

 最初の霊長類が誕生したのは、1億年から7千年前。その後、現代の人類の起源ともいえるホモ・サピエンスが生まれたのは約20万年前と言われている。つまり、地球に霊長類が誕生する遥か昔に、地球は緩慢に変化し続け、気が遠くなるような時間をかけ、今われわれが見る地形を作り出したのである。古生代とつながっている風景を目の前にすると、意識が遠のくような感懐を覚える。

 やんばるの森には、さまざまな固有種が生息している。「やんばる」とは山原を意味し、沖縄本島北部の森林を指す。その昔、琉球列島は大陸とくっついたり離れたりしていたため、その間に取り残された生き物が固有種として進化を遂げたと言われる。それら〝ご長寿生物〟の末裔たちが発する息吹は、そのまま生命力の波となって私の心身に降り注いだ。切り立った岩山の間を縫うように歩いているだけで、満腔に活力が漲ってくるのがわかる。そこかしこに漂うビャクダンの香り(たぶん)に、森のなかへいざなわれているようでもあった。

 大石林山には御願ガジュマルという、とんでもない樹がある。写真を見れば一目瞭然。幹から四方に張り出した枝から無数の根が下がり、地表に着地すると水分を吸い上げ、どんどん太くなる。岩に小さな裂け目があれば、まるでドリルのよう穴をこじ開けてなかに潜り、まったく別のところから顔を出すといった力を見せつける。近くに他の樹があれば、ヘビのように巻き付いていく。

 やがて、根は無数の幹のようになって周りを圧倒していく。この、おどろおどろしい姿は、植物という概念を超えている。なにか得体の知れない霊気が宿っているとしか思えなかった。

 生命を継ぐこと、それは時間の概念を凌駕することでもある。

 

「美し人」

美の生活化―美しいものを人生のパートナーに

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」連載中。第33話は「どんな日も〝いい日〟につながっている」。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(181202 第861回 写真上は大石林山。下は御願ガジュマル)

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