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夢をもち続けた男がつくった夢空間

2018.03.14

 こんな素敵な人がいたのか!

 最近まで、まったく知らなかった。原信太郎(はら・のぶたろう)が作った鉄道模型を展示している「原鉄道模型博物館」に行って、度肝を抜かれた。同館は横浜駅にほど近い、日産自動車グローバル本社に隣接したビルのなかにある。

 私は特別、鉄道ファンではないが、ここにある巨大なジオラマを見ているだけで日が暮れてしまいそうだ。なにしろ多くの列車が、本物さながらの音を響かせ、走っている。

 レールと車輪には鉄が使われていて、ゴトンゴトンという音はリアリティーがある。思わず、ドヴォルザークの「ユーモレスク」を思い出してしまう。列車はきちんと上の電線から電気をとっている。しかも、パンタグラフは電線に合わせて上下に動く。列車が通ると、信号が自動的に青から赤に変わる。なにもかも臨場感がある。

 ジオラマも芸が細かい。まず、パリのリヨン駅をイメージしたメインの駅舎が驚くほど緻密だ。そういえば、こんな感じだったと記憶が甦る。大きな岩山がふたつあり、それらをロープウェーがつないでいる。よく見ると、ロッククライマーも見える。立体交差がいくつも設けられていて、河川にかかる架橋もある。間近で見ると、カーブの前周辺の石が赤い。ブレーキで車輪が削られて鉄のカスが落ち、錆びているのだ。また、館内の照明は時間とともに色が変わり、一日の経過を表現している。

 一周約70メートル、路線数6本、線路の総距離約450メートル。世界最大規模だという。子供がシュミレーション運転できる装置もある。

 原信太郎という男、いったい何者?

 資料によれば、1919年、東京生まれ。子供の頃から鉄道が好きで、鉄道を撮影し、一番切符を集め、早くも小学6年生から本格的な模型製作を始める。海外の鉄道について知りたくなって小学生の時から英語を学び、中学・高校でドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語を習得。大学入学前にはロシア語も習得したという。そのおかげで海外の専門書を読み解くことができた(それらも展示されている)。鉄道の技術革新があると、世界中どこへでも行き、研究した。

 鉄道技術を学ぶために東京工業大学工学部機械工学科に入学。戦後は、コクヨで開発技術担当。在職中、300以上の技術特許を個人で請願・維持というのだから、根っからの開発者なのだろう。

 彼が作った鉄道模型の数は約6000両。それらを展示するため、2012年、「原鉄道模型博物館」開館した。その2年後、この世を去った。

 なんと夢多き人生だったかと思う。子供の頃、好きだったことに、いつまでも夢中になる。そうできれば、誰もが幸せになれる。そんなことを教えてくれているような気がする。

http://www.hara-mrm.com/

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。今回は「自分のカラーを大切にする」。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(180314 第796回 写真はいずれも原鉄道模型博物館の「いちばんテツモジオラマ」風景)

 

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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