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「都市の中心は空虚である」

2018.01.08

 年末年始の約一週間、新宿御苑が閉園していたため、その間、神宮外苑方面を走った。東宮(赤坂)御所に沿って走り、赤坂迎賓館を回って帰ってくるコースである。

 今回もあらためて思った。東京という大都市の中にある「空洞」のことを。

 以前も小欄で書いたかもしれないが、フランスの哲学者・ロラン・バルトの言葉を引用する。

 ——私が語ろうとしている東京。いかにもこの都市は中心をもっている。だが、その中心は空虚である。

 

 空虚が皇居を意味していることは明らかだ。国民の関心と尊崇の念を惹きつけ、ただならぬ紐帯の波動を送っている皇居。そのような場所は皇居だけに限らない。皇室に関わるエリアはすべからくそうだ。前述の東宮御所も明治神宮も神宮外苑も新宿御苑も……。その証拠に、どれほど強欲な輩も、バブルの時代、ただの一片の土地さえそれらを侵すことはできなかった。

 上空から見るとわかるが、人口が密集した東京の真ん中に巨大な空洞がある。日本の歴史を理解しない合理的な権力者なら、それらを「活用」した方がいいと言うに決まっている。しかし、これまでずっと日本人は、そんなことを考えることさえしなかった。私はこの巨大な空洞に最大の価値をおく民族の末裔であることに誇りを抱いている。

 

 家無滞貨不富(いえにたいかなくんば とみならず)という禅語がある。どういう意味かは知らないが、私は「無駄な物がないような家は、富んでいるとは言えない」と解釈している。

 つまり、生活の中に不合理な部分を残すということ。

 合理性を求めた昭和の人生モデルは、ほぼ崩壊しかかっている。幼稚園のうちから有名大学のレールに乗り、社会に出ては一流企業に入る。そうすれば、一生安泰だと信じられた時代だった。

 そんな面白みのない生き方を是とする人生モデルはさっさと崩壊してもらいたい。社会のためにも、本人のためにもならない。なぜなら、せっかく獲得した人生、行き先が決まっているレールに乗っていったい何が楽しい?

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(180108 第780回 写真上はロラン・バルト、下は出光美術館から望む桜田門)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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