地元の人たちが守る歴史の点景
タクシーの運転手に聞いて、初めて知った。
通称「異人館」。正式には「旧鹿児島紡績所技術館」。前回紹介した仙巌園のすぐ近くにある。世界遺産に認定されているが、知名度は低く、見物人もほとんどいなかった。
明治初頭、紡績工場を稼働させるために英国から技師を招いた。彼らのために用意した宿舎がこの異人館である。
当時、情報漏えいを恐れ、英国人が外のトイレに行くにも見張りがついたという。それほど貴重な「知識」を持っている人を遇するための最高級の宿舎だったのだ。報酬も桁違いに多かったはずだ。
今でもじゅうぶん立派な建物である。明治初頭、苦心惨憺して外国の技術を導入した日本人の「本気度」が伝わってくる。
見物人がいなかったため、地元の案内ボランティアを独占できた。やはり、限られた時間で効率よく「学ぶ」には、案内ボランティアに聞くのが最適だ。
ボランティアの方々はいずれも高齢者ばかりだが、郷土の宝物を案内できることに誇りをもっているようだ。説明を繰り返すうち、トークもこなれてくるだろう。
外国人観光客が急増する現在、案内ボランティアの活躍の場は広がっていくだろう。英語も習得するといい。老境に入って家に閉じこもるのではなく、新たなジャンルにチャレンジする。それは気持ちの張り、健康維持、やりがいにもつながっていくにちがいない。
鹿児島市には歴史の点景が数多く残っている。地元の人たちが守ったのだろう。そういう街は素敵だ。
付近を歩いているとき、面白いものを発見した。右がそれ。なんとこれ、スターバックスなのだ。新たに造ったのではなく、すでにあった建物を有効活用しているのだろう。最小限に抑えられた看板が白い壁に映えていた。
スターバックスのコーヒーを飲みたいとは露ほども思わないが、こういう取り組みは素晴らしい。他の地域でも積極的にやってもらいたい。
※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。
https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo
(171207 第772回 写真上は異人館。下はその近くにあるスターバックス)