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美し人
ココロバエ

人間のプリミティブな美しさ

2017.06.15

 なにを隠そう、私はボクシングのファンだ。

 事の発端は、たまたまテレビをつけたらファイティング原田とライオネル・ローズの試合が中継されていたことだ。1968年だから、9歳の頃。「たまたまテレビをつけたら」というのは、前回書いたサッカーと同じである。それからボクシングに魅了された。
 特に1980年代の中量級黄金時代に活躍したマーヴィン・ハグラーが贔屓の選手だ。彼は統一ミドル級で12度、防衛に成功した人で、そのスタイルはどこまでも美しく、無駄がなく、力強かった。人間というのは、鍛えればここまで美しくなれるのかと感嘆した。
 サウスポーだが、左右両方で打てる器用さがあり、スピード、試合運び、テクニック、パワー、強靱な精神力など、すべてが高いレベルで結実していた。パフォーマンスめいた言動をせず、酒もタバコも甘いものも口にしないというストイックな生活を続けられる修業僧のような選手でもあった(実際、あのスキンヘッドだからね)。
 彼のニックネームは〝マーヴェラス〟。ところが、いまではそれが本名の前についている。改名したそうだ。
 ネットで面白い記事を発見し、思わず笑ってしまった。いわく「シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、マーヴィン・ハグラー、ロベルト・デュランの4人で、だれがいちばん強いですか」という質問だった。中量級黄金時代の主要なメンバーの4人だが、じつは私も長年そういう疑問を抱いていたのだ。
 回答した人は、①ハグラー ②デュラン ③レナード ④ハーンズ と答えていたが、私も同感だ。1985年に行われたハグラーと〝ヒットマン〟ハーンズの世紀の一戦が私のベストマッチである。グアムで現地の白人とテレビ中継を見た覚えがある。

 

 ところで話は変わるが、どこかの高校のサッカー部でコーチが生徒の胸を小突いているシーンがネットで流され、問題となってコーチが解任されたというニュースを見た。
 なんとくだらない世の中になってしまったのか。あれが暴力? ただ胸を小突いただけじゃないか。
 スポーツのコーチにはいろいろいる。理論的に説明してうまく人を導くタイプもいるだろうが、鬼コーチはいつの時代にもいる。そもそもあれだけ本気で怒るというのは、情熱がある証拠だ。いい選手に育てたい、強いチームに育てたい、と。情熱がなかったら、仲良く和気あいあいとやっていればいいのだから。
 それを撮影し、ネットで配信するバカもいれば、それを見つけて騒ぐメディアもバカだ。もっとひどいのは、臭い物には蓋をしろ的に解任してしまう学校側だ。
「生徒にケガはなかったもようです」
 ニュースはそういうコメントで終わった。
 アホか? 殴ったわけでもないし、ちょっと小突いただけじゃないか。それでケガをするような子供はスポーツなんかするはずがない。
 あー、ほんとにひどい世の中になってしまった。まさに〝一億総監視社会〟だ。
(170615 第729回 写真マーヴェラス・マーヴィン・ハグラー)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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