「眠り」という名の修復士
眠りとはなんだろう。なんのためにするんだろう。
若い頃は、眠ることがもったいないと思っていた。「死んでいる」ような時間をもっと短くできないものかと。
しかし、今はちがう。いい眠りは、いい人生の必須条件だと思っている。逆もまた真なり。いい眠りのない、いい人生はない。
巷では「理想的な睡眠時間は○時間」と喧伝されているが、そういう情報の大半は空虚である。人によって、適切な睡眠時間は大きく異なるのだ。前項『扉を開けろ』の主人公・小西忠禮氏は3時間も眠れば、再びブルドーザーのように仕事を続けることができたが、私は8時間くらい眠らないとダメだ。さらに30分の昼寝もする。これだけを比べたら、両人の間にとほうもない差があるが(もちろん、私が怠け者)、私は私なりに理に適った睡眠をとっていると思っている。
夜、ベッドに就く前、心身ともにボロボロになっていることがある。もちろん、嫌なことで消耗しているわけではない。とことん、やりきった後の極度の疲労感だ。誰とも話したくないし、考えるのもめんどくさい(案外、そういう時にいいアイデアが湧いてくるのだが)。もうダメだぁ〜と10時を待って横になる。
気がつくと朝になっている。数分の前後はあるが、ほぼ6時に目が覚め、すかさず起きる。その時、感動するのだ。まるで別人になっている! と。前夜、寝る前の自分と起きた時の自分。換骨奪胎というか、すべてが入れ替わっていると感じるくらい、スッキリしている。
いったい、人間の体のメカニズムはどのようにできているのだろう。眠っている間、いったいどのようにして疲労しきった心身を修復しているのか。
おそらく「眠り」という名の修復士がいろんな道具を使って、コツコツと各細胞をリセットしているにちがいない。
すごいなあ、人間の体は。この能力を信じなくて、いったい何を信じろと言うのか。
(161216 第686回 右上写真:眠りといえばこの方の足元にもおよびません)