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美し人
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文化遺産の使い方

2008.11.19

 ぜがひでも泊まってみたい……。そう思えっていた宿があった。

 長野県小布施町の桝一客殿。桝一市村酒造場(小布施を再興させた小布施堂と同じ経営)が昨年オープンさせたホテルというか宿である。古くからあった蔵の良さを生かしつつも、随所に手を入れ、快適性をあげている稀有な例だ。設計者は誰かわからないが、アジアのスモールラグジュアリーホテルを参考にしたであろう痕跡が数多く見受けられる。

 まず、商業臭がないところがいい。フロントはいたって簡素で、迎えるスタッフたちは全員ハッピ姿。フロントの背後にはガラス越しに屋根瓦が積んであるのが見える。

 水辺の脇の通路を奧へ行くと、宿泊棟がある。部屋は番号の代わりにそれぞれ葛飾北斎の絵が与えられ、絵合わせをして中に入ることになる。

 部屋も伝統的+モダンの装いは変わらず、ゆったり過ぎるほどのスペースが確保されている。天井も高く、ごっつい梁が露わになっている。

 唯一残念だったのは、ステンレス製のバスタブ。どんなに熱いお湯を入れても、お尻のあたりが冷たい。これはお風呂文化を知らない外国人設計者のミスだろうが、それを防げなかったのはコーディネーターサイドの不手際だ。

 それでも、桝一客殿は聞きしにまさる文化的な宿だった。酒とともに収納されたライブラリーの美しさ、蔵書の質の良さには目をみはるものがある。館内にレストランはなく、外へ回遊させようという考え方は、街づくりの原点だと思えた。とは言っても、周りにある飲食店は、同じ会社経営による「蔵部」やイタリアンの「傘風楼」、など限られてはいるのだが……。

 私が国内で最も好きな宿は二期倶楽部なのだが、桝一客殿も相当イイ線いっている。ことに客室の完成度は申し分ない。

 ここに泊まった後、翌日は松本に泊まって夕食は〈ジラソーレ〉で、翌日はランチを〈ドマノマ〉で食べ、浅間温泉で温泉に浸かって帰る、というのがお奨めのコースである。

(081119 第76回 写真は桝一客殿の屋根)

 

 

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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